〜今月のテーマ『むいて、洗って、また戻す』〜
●『自分を語る効果』
○『神様との出会い?』
●『がん予防に「むいて、洗って、また戻す」』
○『皮オナニーのすすめ』
●『亀頭オナニーの問題点』
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●『自分を語る効果』
性教育のみならず、思春期の若者たちにいろんなことを伝えたいと思いつつ、うまく伝えられないと思っている人が少なくありません。ヘルスプロモーション研究センターではそのような思いを持っておられる方を対象に毎年、思春期保健指導者養成講座を行っています。この研修は誰かに学ぶ研修ではなく、一人一人がもっている素晴らしいメッセージをいかに上手に聴衆に伝えるかのコツを持って帰っていただくようにしています。先日、今年度の受講生からうれしい連絡をいただきました。
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思春期保健指導者養成講座を受講後何度か性教育に中学校や高校に伺いました。毎年伺っている(今年で6年目になります)高校の養護教諭の先生から「なんか話の仕方が変わりましたね。前よりももっと聞きやすくなりましたよ。言葉は簡単になっているんだけど,伝わるものが多くなりましたね」と言われました。研修のことを話したら納得をしていただきました。また,健康教育後のアンケートに感想を書いてくれる子が以前よりもずーっと増えたことに気づきました。(書いてない子がいないくらいでした)とてもうれしくなりました。やればやるほどこれでいいのだろうかと悩みつつやっているようなところがありましたので,ひさしぶりにすっきりとうれしい気持ちになりました。採算の取れない研修とも伺いましたが,ぜひ今後も続けていただければと思います。言葉ではうまく伝えることができないのですが,本当にありがとうございました。
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この研修での基本は「自分を語ること」です。スローガンを言わない、思いを押し付けない、メッセージをシンプルにすることで話し手の思いが聞き手にも素直に伝わるという、ごくシンプルなことを実感していただくものです。受講生からうれしい感想をもらった後で、私も10年近く前に私の話を聞いた方から、私の得意なフレーズ、「むいて、洗って、また戻す」が語り継がれていることを知り感動させていただきました。そこで唐突ですが今月のテーマは「むいて、洗って、また戻す」としました。
『むいて、洗って、また戻す』
○『神様との出会い?』
ある学校で講演が終わった後、「先生は10年くらい前に○○中学校に来ましたよね」と若い先生が声をかけてくれました。確かに10年近く前に2〜3回行ったことがある中学校だったのですが、その先生は当時中学3年生として私の話を聞き、特に包茎についての話が印象深かったようでした。手術をする必要はない、清潔さえ保てればいいということ簡潔に「『むいて、洗って、また戻す』でいいんですよ」と今でも話している私のメッセージが、実はいまだにその先生の友達との間で語り継がれ、飲み会の席でも「むいて、洗って、また戻す」を笑いの種にしながら、そのリズムで乾杯していると教えていただきました。名刺をお渡ししたら「地元に『(包茎の?)神様に会った』と自慢しながら帰れる」と喜んでもらえました。
●『がん予防に「むいて、洗って、また戻す」』
紳也特急で何度も書いてきたことですが、やはり大事なことは何度も、繰り返し伝えなければならないようです。未だに「私の包茎は手術をした方がいいでしょうか」と私の外来を受診する人が後を絶ちません。それもそのはずです。この原稿を書きながら「包茎」でインターネットを検索したところ475万件ヒットしました。「誇大広告に注意」というHPを丁寧に読んでみると、結局のところ手術をしましょうという方向に持っていかれてしまいます。
亀頭部まで包皮がかぶっていれば包茎です。日本人の過半数以上の人は包茎です。でもむければ仮性包茎といって、国も病気を治療するための保険診療での手術は認めていません。すなわち「かぶれば包茎、むければOK」です。ただ、洗わなければ清潔を保てませんので「むいて、洗って、また戻す」必要があります。
ただ、10年前に私が「むいて、洗って、また戻す」と話していた時は、細菌感染が原因で亀頭包皮炎を起こしやすいのでそれを予防しましょうとしか考えていませんでした。一方で、亀頭部や包皮内を清潔にできない真性包茎の人(むこうとしても全くむけない、亀頭部を出せない人)が陰茎がんになる確率が高いことは泌尿器科医の常識でしたが、この陰茎がんの原因がヒトパピローマウイルスであることが明らかになっています。人間誰しもが感染をするヒトパピローマウイルスですが、これに持続感染を起こすと子宮頚がんになることもわかってきました。この子宮頚がんは検診で確実に予防ができる数少ないがんです。
詳しくは下記のサイトを参考にしてください。
http://www.orangeclover.org/
男性の場合は、陰茎がんの最大の予防方法は、何と言っても洗うことです。
やっぱり「むいて、洗って、また戻す」が大事ですね。
○『皮オナニーのすすめ』
生徒さんからの質問に教えられることも少なくありません。「皮オナニー」という言葉を知らなかったことについては紳也特急の95号で書きましたが、先日も次の相談を受けました。あらためて「皮オナニー」をネットで検索すると76,300件ヒットしました。何と半年余りでヒット数が3倍に増えています。
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岩室先生の演説(?こう書く人が少なくありません)を聞いて、やっとメールする決心がつきました。皮オナニーは皮が伸びて包茎の原因になるという事を良く聞くのですが・・・。中学生の頃はなんとも思わず続けてきたのですが、高校生になったら自分の体の事で悩む事が多くなりました。自分でネットを使いいろいろ調べてみたのですが、皮オナニーは絶対ダメというところと皮オナニーは大丈夫というところがいくつもあって正直困惑しています。ダメというサイトは皮が伸びて包茎の原因と書いてあり、しても良いというサイトは、小さい頃からしても皮は伸びないと書いてありました。僕の男性器は通常でも勃起時でも皮を被っていますが、双方とも自分の手を使えば剥く事ができます。皮オナニーは実際影響が出るほど皮が伸びるものなのでしょうか?自分の感覚ではほとんど伸びていない感じがして、さらに困惑しています。
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インターネットというのは本当にいろんな情報が氾濫しているところです。インターネットの専門家が指摘するように、「インターネットにはあなたが求めている答があります」というのは本当ですね。この方のようにいろいろ調べて行くと正反対の情報もあり、どちらが正しいのだろうという疑問が生まれますが、一方の、それも自分に都合がいい情報に最初にたどり着くと間違った情報を鵜呑みにしてしまう可能性大です。
では、皮オナニーの正解とは何でしょうか。包茎の人で、勃起時も包皮が亀頭部の出っ張り、いわゆる「カリ」と呼ばれる所を覆っている人が皮をかぶせたまま、手と亀頭部の間に包皮を介在させた状態で亀頭部を刺激するオナニーをすることがあります。それを皮オナニーというようですが、ごく自然な方法です。正常なオナニーの、というか正統なオナニーの方法です。このことを敢えて皮オナニーと呼ぶ必要もありませんでした。と、ここまで書くと、皮オナニーの語源がどこにあるかは容易に想像できます。仮性包茎の人にとってごく自然なオナニーの方法を「問題あり」とすることで儲かる人は誰でしょうか。当然、仮性包茎の手術をする人たちです。今までもいろんな手法で包茎の手術を受ける患者さんたちを増やしてきたようですが、次なるイメージ戦略が「皮オナニーは百害あって一利なし」なのでしょうね。それにしても、その浸透ぶりには驚くばかりです。
先の質問者は次のような質問もされていました。
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亀頭は皮から露出していないと成長しないということをネットで読んだのですが事実なのでしょうか?それから寝るときや家にいるときなど可能な限り皮を向いた状態にしているのですが・・・自然に皮が被ってしまいます。朝起きたときも、皮が戻っている状態になっています・・・。やはりこれは皮オナニーの影響なのでしょうか?それで皮オナニーを一度やめようと思い、最近知った亀頭オナニーをしてみたのですがあまり快感が得られず時間がかかってしまいどうしても手軽な皮オナニーになってしまいます。このまま皮オナニーを続ければ取り返しのつかないことになりそうで怖いです。岩室先生から何かお言葉をいただけないでしょうか。自分の口から友達や、学校の先生などには恥ずかしすぎて相談することも出来ません・・・。
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ものの見事に「皮オナニー諸悪の根源説」にはまってしまったようです。もちろん私が「皮オナニー正常説」、「仮性包茎正常説」を説明しご理解いただけたようです。
●『亀頭オナニーの問題点』
そもそも射精というのは単に亀頭部への直接的、物理的な刺激だけではなく、パートナーの体、パートナーとの関係性、アダルトビデオ等の映像、想像力などから受ける性的な刺激を含めた総合的な刺激でおこるものです。包皮が余っていない人は亀頭部を直接手で刺激したりしますが、総合的な性的刺激で射精するのではなく、手や器物を使った強い物理的刺激だけで射精することを覚えると、パートナーとの生身のセックスで射精できない事態が起こることがあります。その意味では皮オナニーというのをしている人は物理な刺激が強すぎず、生身の人との性生活に支障はきたしません。最近は男性のオナニー用ジェルなどが発売されていますが、亀頭オナニーを行う人にとっては刺激をやわらげた状態を作り上げられるという点ですぐれものなのかもしれません。
インターネットの世界には次から次へと新しい罠が仕掛けられて行くようですが、私を含めた多くの大人たちはその情報になかなかついていけません。金八先生でも出てくる学校裏サイトは本当に深刻ですが、そのようなものがあること自体多くの大人は知りません。私の場合、性に関する新しい罠がどこにあるのかを一番早く教えてくれるのが若者たちの声です。これからも講演会で、メール相談で多くの情報をもらえるよう若者たちとコミュニケーションを図りたいと思っています。