紳也特急 110号

~今月のテーマ『異性だから語れる相手の性』~

●『HP相談の目的と義務』
○『男性の性はどう考えればいいのか』
●『女性が語る男性』
○『理解したいお互いの性』
●『男女差がある理由』
○『異性だからたどり着く正解?』

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●『HP相談の目的と義務』
 今月もメール相談に学ばせてもらいました。
 「あのう妊娠て入れられないとならないですか??裸じゃなくて服のまま寝転がって上にのっかられても妊娠したりしますか??」
 この質問に対応したら次の質問が来ました。
 「万が一って入ってなくても服を来たまま上にのっかられても妊娠してしまうんですか??」
 「あなたはどう思いますか」と返すと
 「ありえませんね(笑) 変なこと質問してごめんなさい。でも答えてくれてありがとうございます。」
 HPからの相談にはなるべく丁寧に答えようと心掛けています。そして単に相手が求めているであろう答えを返すだけではなく、考えることを放棄している(紳也特急98号)若者たちに考えることの大切さをどこかで感じてもらいたいと思い、相談者自身が自分の中にある答えにたどり着く過程をお手伝いすることができたらいいなと、なるべくカウンセリングという気持ちで対応しています。
 ただ、どこまで付き合うべきかで悩まされることも少なくありません。今回のように「あなたはどう思いますか」と返すと逆切れされる、「わからないから質問しているので答えを出せ」といった雰囲気でこちらの方が怖くなることがあります。さらにHP上に「岩室紳也へのメール」というコーナーを設けているということは岩室紳也にはそこから送られたメールに答える義務があると受け取る方が少なくありません。
 一方で、少しいやになるメールが続いても、丁寧に返していると、感謝されたり、こちらが勉強になったりということも少なくないのでこれからもいただいたメールには丁寧に返事をしたいと思いました。メール相談と同じように、「答え」を求めて私に講演依頼をされる方が少なくないのですが、講演も同じで、注文に応えていく中で私自身が改めて気付かされることが多々あります。先日、いつものように「男の子の性」についての講演依頼をいただいたのですが、一連の準備や講演、そして質疑応答の結果として「異性だから語れる相手の性」ということに気付かせてもらいました。それを今月のテーマにしました。

『異性だから語れる相手の性』

○『男性の性はどう考えればいいのか』
 男性の性は射精で終わる?
 男性は興奮→勃起→射精→満足→おしまい?
 男性の性に愛はない?
 男性にとって愛と性欲は別?
 皆さんはこのような質問を浴びせられたらどのように答えますか。どれも「確かに」とうなづくものばかりのような、でも違うよねと反論したいような気分になりました。質問を浴びせられた私が一瞬たじろいだのもまた事実でした。
 「男とは、男性とはこういう生き物です」と語ったところで、すべての「男性」を語れるはずもなく、また、同じ「男性」でもその時々によって、状況や環境によって、相手によって行動も思いも変わります。それを一言で言えないと逃げていても始まりません。

●『女性が語る男性』
 私の研究センターで毎年行っている思春期保健指導者養成講座から生まれたメッセージを振り返ってみると、そこには女性が語っている男性というのがいくつもありました。

 私は、高校2年生の時に初めて彼と呼べる人ができました。その人は同じ高校に通う同級生でした。自分のことを好きになってくれるのがうれしくて、ずっと彼と一緒にいたいと思うようになりました。幸せな気持ちでいっぱいでした。思いのとおり、1日のほとんどの時間を一緒に過ごすようになり、つきあい始めて3ヶ月ほど経った頃、彼に求められたのです。別れることなんて考えていなかった私は、戸惑いながらも自然と彼の求めに応じていました。きっと心のどこかで私もそうなりたいと思う気持ちがあったのだと思います。でも、会うたびに求められるようになり、「彼は本当に私のことが好きなのか」「ただHがしたいだけなのか」今までとは何か違うという思いを持ち始めました。同時に「赤ちゃんができるかもしれない」「できたらどうしよう」という不安がいつも心のどこかにありました。そのときの私は、妊娠をすると、おなかが大きくなるということ以外はよくわかっていなかったのです。バイトしたお金で初めて医学書を買いました。まず「月経が止まる」と書いてありました。当時の私の月経は規則的ではなく、ただ遅れているだけなのか、妊娠してしまったのか、判断できませんでした。「今赤ちゃんができても産めない、妊娠してたらどうしよう」誰にも言えず一人悩んでいた私は、月経が来たときには涙が出るほどホッとしました。それからも「彼に嫌われたくない」という気持ちから関係は続き、いつもどこかに不安を持ちながら、月経が来るとホッとするという日々を繰り返していました。自分の本心は伝えきれませんでした。2年ほど経ったある日、「他に好きな人ができた」と彼に別れを告げられました。

 このメッセージは一人の女性が元カレとの経験を語っていますが、実際には一人の男性の性を上手に表現していると思いませんか。自分の経験を丁寧に語ることで、パートナーの性もまたきちんと伝えられる、理解できるようになります。少なくとも男性である私はこのパートナーの気持ちでこのメッセージを聞いていたので大変複雑な、男ってやはり「興奮→勃起→射精→満足→おしまい」なのかなとも思ったりしました。

○『理解したいお互いの性』
 「アンアン」が性に関する特集を組むとその号は完売する。乱交の勧めかのようなショートバスという映画が女性に人気。女性の性に関する意識も確実に変わってきています。そんな中で「アンアン」の性の特集で性感染症の取材を受けたからなのかはわかりませんが、女性からの相談が、それも20代、30代と思しき方からの相談が増えています。

>初めて男性とセックスをしたのですが、セックスによるオルガスムスを迎えることができませんでした。

>女性のオルガスムスに関することを知りたいと思っても、正しい情報がわかりません。社会は男女平等を意識した社会になっていますが、性生活においては女性の立場から見たセックス、オルガスムスへの関心は低いと思います。

>長い間動かされると苦痛なので、気持ちよくなったふりをして終わります。彼は私に合わせてくれているようなので、私が気持ちよくなった様子でないと終わりません。

>映画やその他のセックスのシーンではとかく女性がオルガスムスを迎えたように描かれているので、それが普通のことなのかと思ってしまいました。

 男性も女性もセックスはこうあるべしと思い込まされているのか、本当にいろんな悩みを抱えていますね。ただ、ここに紹介した言葉を通して見えてくることは、異性、というか、パートナーが語っている二人の性は、見方を変えれば異性が語っている、異性だから語れる相手の性が表現されていると考えられます。

●『男女差がある理由』
 このようなメールをいただく中で、貴重な自己分析をいただき、「そうだよね」とうなづいていました。

 オルガスムスに男女差がある理由を考えてみました。人間がまだ、文化や文明をもたずに森の中で野生に暮らしていた時、セックスをしている最中に女性もオルガスムスに達してしまっていては、敵(ライオンみたいな肉食)が襲ってきても逃げられなくなるから。女性がまだ冷静な分、敵の存在をキャッチでき、男女ともども逃げられる。どちらかが冷静じゃなきゃいけなかった。だから、人間が生き延びるために神様は男女差を作った。

 なるほどと思いました。動物の性に学ぶことで、性差の意味が見えてくるのかもしれません。雌のライオンは群れで子育てをします。これは人間に対して群れで子育てをしなさいと教えてくれているのかもしれません。性差はあるものだと言い過ぎるとまた反論も多くなるのですが、私はここでも「みんなちがってみんないい」ということだとあらためて学ばせてもらいました。

○『異性だからたどり着く正解?』
 男性の性を「興奮→勃起→射精→満足→おしまい」とよく表現していますが、男性にとっては性的興奮の絶頂を迎えることが射精という行為につながるためにも必要なことです。一方で女性のオルガスムスについてはこうすればオルガスムスが得られるという正解があるわけではありません。一生オルガスムスを経験しない人もあります。このことを問題視する方もいますが、こうすればオルガスムスが得られるという解答がないからこそ、女性のオルガスムスに関してみんなが納得できるような情報がネットでは得られない、提供できないのではないでしょうか。にもかかわらず、正解を求めたい人がネットサーフィンをする中で私のサイトにたどり着くようです。
 私の中には女性の性に関する正解はありません。男性の性に関する正解もないと思っています。ただ、一男性として女性がなかなか理解できない異性(男性)の性は日々経験しています。女性からの相談であっても、私が男性だから見えてくる相談者とパートナーの関係性への気づきをお返しすると、相談者一人ひとりがご自分で正解にたどり着けるようです。これからも微力ながらお手伝いができればと思っています。
 逆に、女性にはもっと女性の視点で男性の相談に乗っていただければと思いました。包茎を気にしている女はいない。でも不潔な包茎は女性の病気の原因にもなる。早漏気にするより、しゃべれない自分を気にしろ。持ち物より持ち主が大事。これはなかなか男では気がつかない、言えない、言っても響かない視点です。性は本当に難しいですね。