紳也特急 128号

~今月のテーマ『考える力』~

●『生徒の感想』
○『コミュニケーションを絶つ関係性』
●『包茎心配症候群』
○『コミュニケーションを避ける「わからない」』
●『長崎県コンドーム販売規制条例』
○『学力と無関係のコンドーム』
●『考えるさせるトーク』

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●『生徒の感想』
2月と3月の講演ラッシュで生徒さんから面白い感想を多くいただきましたのでコメントをつけて紹介します。
高2男子:初めて講演会で大笑いしました。面白かったですが、すみません。俺、タブーをすべて犯してます。
岩室:AVを見てオナニー。ベッドにこすりつけるオナニー。2次元命。いつかは脱却しましょうね。

高1男子:顔はかたっくるしいのに話は全然よくて、分かりやすかったし、先生の講演を聞けて良かったです。
家内:いまどき七三分けはいないもんね。

高2女子:また性教育、なんて言って講演なめてた。思っていたよりもずっとためになる、聞ける話だった。
岩室:スローガンやあるべき論の性教育が相変わらず多いのでしょうか。

高1男子:面白い話とまじめな話のメリハリがしっかりとしていたのでトークがうまいなあと思った。
岩室:講演と言うよりトークですか。トークの達人を目指します。

高1男子:スライドも使用せず、トークだけであれだけ楽しめるとは思いませんでした。説明ばかりの講演ではなく、生徒に考えさせながらの講演だったので集中できた。ほとんどの話が、先生の実体験を通しての話だったので、とても身近に感じたし、わかりやすく、面白かった。
岩室:考えてもらえるトークになっていて何よりです。

高1女子:話がわかりやすくて、生徒とのコミュニケーションもよくとれていたので良かった。
岩室:講演会というのは確かにコミュニケーションツールです。

高2女子:返事のできない男はモテない。コンドームネクタイは非売品(だけどアキバで売ってる)。チャンピオン君は、先生のあいぼー。子宮けいガンての注しゃうけて下さい。ハーイ。なんか、とにかく笑った1時間だったー。知ってることだけど、なんでかは知らなくて、そういう所がわかって良かった!楽しいから、変なカンジしなくて、気軽に聞けた。輸血でもエイズって、ホントなんだって思った。肝炎(?)だけかと思ってた。そしてコンドームのケースXとか、カッコ良い。生理のしるしはやっぱ大事だから、これからも続けて手帳に書こうって思ったー。男の子の知らないところも知れた。きっと男子も女の子と知れたって思ってるはず。男にしても女にしても、すんごく為になるお話だった。今日、コンドームの達人でけんさくしよう。20人ゲイかあー。友達でいたいなあ。女の子の体のともだちもいた。その人はバイだったよ。元気にしてるかな。
岩室:講演会のまとめをしてもらったような感想、ありがとう。

感想を読ませてもらうと、一人ひとりが何を感じ、何を考えたかが見えてきてこちらとしても勉強になります。その一方で白か黒かを求める、正解が欲しい人が増えているのも事実。そこで今月のテーマを「考える力」としました。

『考える力』

○『コミュニケーションを絶つ関係性』
当然のことですが私の講演に対して好意的な感想ばかりではありません。批判的な内容はむしろ大歓迎なのですが、「こういうのはいらない。プリントを配るだけでいいのではないか」というのを読んで少し怖くなりました。同じ高校での感想で「今まで学んできたことは他人事で知識として頭の隅におくだけだった」というのもあっただけに、知識さえもらえればいいという発想は、いま教育界が取り組んでいる「生きる力」とは何かが理解されていない結果ではないでしょうか。
くり返し書いていることですがIEC、すなわちInformation(情報)をどんなにEducation(教育)しても増えるのは知識だけです。この知識を活かせる「生きる力」を育むにはCommunicationを通した様々な学びが必要です。先の感想を書いてくれた生徒さんが在籍する学校はいわゆるトップクラスの進学校です。知識があれば確かに東大や京大、医学部に合格することでしょうが、その後の人生は知識だけでは当然のことながら泳いではいけません。しかし、コミュニケーションを絶ち、関係性に学ぶことなく知識(成績)だけを追い求める人が増えていることは間違いありません。

●『包茎心配症候群』
このタイトルは3月29日号のAERAに掲載された包茎に関する記事のタイトルでした。「うまい」と思いませんか。記事の中にで発達心理学の専門の先生が「偏差値世代の親は、白か黒かはっきりしないメッセージは受け取りたがらない。どうすれば我が子が傷つかないかの答えを探しながら、ガラス細工のような子育てをしています」と指摘しています。「むくべきか、むかざるべきか」ということで悩み考えるのではなく、誰かに正解を、白か黒かを教えて欲しいのでしょうね。
私が「むきむき体操」を推奨していることに対して、反対の立場の小児外科の先生が記事の中でコメントしています。対立する意見が紹介されることは大いに結構なことですが、正確な理解のために私なりの反論も書かせていただきます。反対の立場の先生は「排尿時におしっこが包皮にたまって膨らんだり、亀頭包皮炎を繰り返したりするのが病的な包茎」と定義して、「病的な包茎でなければ、治療の必要はない」とおっしゃっています。そもそも、「病的」や「治療」の定義は何でしょうね。ミミズにションベンをかけてちんちんが腫れた状態は確かに「亀頭包皮炎」という病名で呼ばれます。しかし、ちゃんとむいて洗っていれば亀頭包皮炎という病的な状態は予防できます。排尿時におしっこが包皮にたまって膨らむ状態のお子さんもむきむき体操でちゃんとむけるようになりますが、そもそもわたしの「むきむき体操」は治療行為ではなく、「歯磨きで虫歯を予防しましょう」と同じレベルのことです。(仮性)包茎の人は当然のことながら排尿の時に包皮をむいてしていると思いますが、そのたびにおちんちんを治療しているのでしょうか(笑)。

○『コミュニケーションを避ける「わからない」』
議論は最終的にどちらかが論旨の矛盾をつかれて退散するか、平行線をたどり続けるかのいずれかです。小児の包茎に関しては相変わらず私とは平行線のままという先生が少なくありませんが、相対的にみれば「手術はいらない」という私の主張の支持者は確実に増えています。しかし、議論が平行線をたどったままの先生たちは残念ながら岩室の主張が「わからない」、「理解できない」ようです。
ある学校の感想の中に「先生の質問に対し、『わからない』と発言する人が多かった。同じ○高生として恥ずかしかった。この講演からちゃんと見直して欲しいと思いました」というのがありました。その後、「わからない」と発言する生徒さんには、「『わからない』はやめませんか。確かにわからないことはわからないから間違いではないけど、この岩室もいろんな間違いや失敗を繰り返してきました。間違った時、失敗した時にこそその悔しさから多くの学びがあります」と伝えるようにしています。
議論を平行線に持ちこむことでどちらかが間違っていたことや、負かされたことを回避できます。もしかして、よく議論が平行線をたどるのは、自分の間違いを認めたくないためなのでしょうか。そうだとすると私も未だに多くの医者たちと議論が平行線のままの、「かぶれば包茎、むければOK」のことや、「前立腺がん検診は48倍もの過剰治療を生んでいる」と言っている私の論旨をもう一度検証する必要があるのかもしれません(笑)。考える力も大事ですが、間違う力、自分の間違いを、非を認める力も大事です。でもどちらの力ももたないと「わからない」に逃げ込み、コミュニケーションを絶ち、考えることを放棄してしまうのでしょうか。反省です。

●『長崎県コンドーム販売規制条例』
長崎県が1978年に少年保護育成条例に盛り込んだ少年少女へのコンドームの販売規制をめぐって議論が続いています。条例の第9条第2項目に「避妊用品を販売することを業とする者は、避妊用品を少年に販売し、また贈与しないよう努めるものとする」と書かれています。審議会では、「条例の廃止は子どもの性行為容認ともとれるとし、性非行を助長するのではないか」という撤廃反対意見に対して、「性感染症に感染する子どもがいる実情を考えると、コンドームの使用は最善で、望まない妊娠を防ぐ意味合いもある」と撤廃を主張する意見が出されているそうです。
コンドームの達人は実はこの平行線をたどっている議論には終止符を打たず、ぜひ続けて欲しいと思っています。「コンドームの達人は撤廃賛成ではないのですか」と不思議がられると思いますが、とんでもありません。だいたい、この条例があるから買わない人はどれだけいるのでしょうか。この条例より怖いのが、「プリントを配るだけでいいのではないか」と言っている若者たちです。長崎県でもコンドームの説明を写真入りで紹介している高校の教科書はちゃんと配られています。コンドームを使わない腟外射精では望まない妊娠のリスクがあることも配布されている高校の教科書に書かれています。しかし、知識はあってもコンドームを話題としたコミュニケーションが若者たちにないため、コンドームを使わないトラブルが後を絶ちません。条例に関する議論がニュースになればなるほど、若者たちがコンドームということを考えるようになると期待しています。

○『学力と無関係のコンドーム』
少し前までは望まない妊娠や性感染症は学力が低い学校の生徒さんの問題だったのが、最近は学力が高い学校でも増えているとある養護の先生が教えてくれました。以前から学力レベルでの性体験率の差はなかったものの、学力レベルの高い生徒さんは望まない妊娠を避けるため、想定されるトラブルを自分で考えて、その対策としてコンドームを使っていたと言います。一方で学力レベルが低い生徒さんは先のことを考えられず、コンドームを使わずにいろんなトラブルに遭遇していたとのことでした。しかし、最近は偏差値とは関係ないコンドームについては知る機会もなく、コンドームということも思い浮かばないまま、コンドームを使うことなくいろんなトラブルを引き起こしているとのことでした。なんとなく納得です。

●『考えるさせるトーク』
「女の子がしたくない、と思うのは本当だと思いました。男の子は自分がしたいからっていう気持ちだけがあると思うんですが、女の子は普通に怖いです。女の子の身にもなってほしいです。これから、付き合っていく人もいると思うけど、互いに考えれる人と付き合いと思いました。(中3女子)」
「とてもためになる話でした。ゲイの中でのコンドームの意味。相手が女ならば避妊のためとなるけど、男にとっては感染のうたがいでしかないということ。レイプによる女の人の気持ち、etc・・・すごく考えさせられました。レイプモノは大好きです。でもそれは先生の言っていたように女が途中から喜ぶモノでは、海外サイトでばらまかれている最後まで女の人が泣き叫ぶモノ。正直オカズにしている時はすさまじくコーフンします。が、終わったあとにひどい罪悪感にさいなまれるのです。画面の向こうのヒドイ現実。それを自分の欲望(オカズ)のためでなく、真剣に考え、将来女の人が泣かない世の中を作りたいです。性とは、子づくりのためでなく、“人の気持ちを考えること”だと考えさせられました。(中3男子)」

考える力を育むにはとにかくトークを重ねるしかないのでしょうね。

余談:有料広告掲載依頼が
私のメルマガに有料でいいから広告をお願いしたいという連絡をくださった方がいます。感謝です。好き勝手なことを、あくまでも岩室紳也個人の考えで書いているため、嬉しい申し出でしたが丁重にお断りさせてもらいました(もったいない)。HPにバナー広告を載せていないのも柵を作らないためです。でもうれしかったのでそのHP(http://www.d12clan.com/)を紹介します。内容については保証の限りではありませんが(笑)、こんな人が私に興味を持ってくださったという報告です。

追伸:岩室紳也がミュージシャン「コバケン」とのコラボ映像をYouTubeにアップ