紳也特急 140号

~今月のテーマ『つらさって、語ってもいいんですね』~

●『つらいこと』
○『つながる』
●『イチローが、松井秀樹が、石川遼が』
○『普段から1%を寄付しましょう』

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●『つらいこと』
 もう生きていたくなかった・・・。
 本当にするわけじゃないけど、死ぬこととか考えてると楽になるんです。
 死のイメージが好き、みたいな・・・。
 長々とごめんなさい。
 こんな話、なかなか誰にも出来なくて・・・。
 なんだか、どうしても誰かに知ってもらいたくて・・・。

 つらかった体験をメールでいろいろ書いて来られる方がいます。もちろん、「つらかっただろうね」とか「そうだよね」と相槌を打ちながら読んでいても相手には伝わりません。でもその人は何らかのサポートを求めています。
 人は、いろんな人の経験を、いろんな人とシェアし、共有しながら、共有してもらいながら生きていきます。私もそうです。人は一人では生きていけません。だから、自分の辛さをネットの向こう側にいる誰かに聞いてもらうのでしょうが、もっと身近な人にも話してみることで救われることが多いですよね。そんな返事をしたら、次の返事がきました。

 先生、こんばんは。返事ありがとう。
 つらいことを話して、人と身近になることを怖がっている私が見えてきます。多分、過去につらいこといっぱい話して身近になった人と、絶縁状態になったトラウマが影響してる・・・。でも本当は、つらさもわかってくれる身近な人を一番求めてるのです。今のままじゃ、後悔してしまうのかな・・・。
 つらさって、語ってもいいんですね。
 ありがとう先生(*^-^*)

 この度の巨大地震と原発事故でみんながいろんな意味でつらい思いをしています。支援している、支援したいと思っている一人ひとりもまた何ができるかを考えてつらい思いをしています。こころのケアはすごく大事ですが、何より「つらさって、語ってもいいんですね」を伝えたくって今月のテーマにしました。時間がないので、このテーマが一番伝えたいことと思ってください。

『つらさって、語ってもいいんですね』

○『つながる』
 今回の震災は多くのことを気付かせてくれます。現地にはなかなか入れないものの、後方支援として何かできるのではないかと「公衆衛生ねっと」( http://www.koshu-eisei.net/ )の中に「災害時の公衆衛生」というサイトを立ち上げ、いろんな情報を送り続けています。それを応援するようにいろんな人が、また次々と情報をくださいます。
 計画停電も気がつけば多くの人が節電に協力する中で実施されないことが多くなってきました。最近、性教育でも「一人ひとりができることを」と呼びかけていますが、やはり危機的な状況になると人は、いま、一人ひとりができる事は何かを考え、行動に移せるのですね。この危機的な状況を乗り越える過程を通して、震災復興だけではなく、様々な分野で人と人とのつながりがさらに深まっていけばと思っています。

●『イチローが、松井秀樹が、石川遼が』
 募金活動でも今までにない大きな金額が話題になっています。イチローが1億円、松井秀樹が5000万円、石川遼が今季獲得賞金全額寄付。ユニクロ柳井会長が10億円。震災からの復興に向けて多くの人が募金をし、これからもしようという人が大勢いらっしゃるでしょう。この金額を聞いた時に、いつも健康づくりの講演会で、半分冗談、半分本気で計算してもらいたいとして提供している話題を思い出しました。
 家を、全財産を、仕事をなくし、借金だけが残っている人ひとりが立ち直るためにどれくらいのお金が必要なのでしょうか。今回の災害からの復興に25兆円、あるいはもっとかかると言われています。しかし、この金額はあくまでも地域のインフラ整備の試算であり、一人ひとりの生活を現状にまで復帰させるという金額までは含まれていません。
 さらに、国家予算も100兆円近くですが、そもそも何十兆円と言われてもピンときませんよね。しかし、健康づくりの分野では日本人の年間の医療費(30兆円)がメタボ検診の根拠になっているのです。講演で次の質問をよく聴衆の方に投げかけています。
 「いま、日本人の一年間の医療費は30兆円です。これは皆さんの貯金の何倍ですか?」
 さて、みなさんの答えは?
 貯金が25万円の人は1億2千万倍。100万円の人は3000万倍。1000万円の人は300万倍。1億円の人は30万倍。
 イチローが、松井秀樹が、石川遼が30万人いないと達成できない金額です。
 ちなみに、今の時点で700億円が集まっているとか。阪神淡路大震災を超えたとか。でも、被災者が100万人なら一人7万円。50万人なら14万円。全然足らないですよね。

○『普段から1%を寄付しましょう』
 海外生活が長い方に「日本人は寄付をする習慣がない」と指摘されました。「いくら寄付するのが妥当かよくわからないのです」と率直に聞いてみました。ここでいう寄付というのは今回のような災害時の募金ではなく、ユニセフのようなボランティア活動等に対する継続的な寄付ですが、その方はあっさりと「年収の1%」という基準を紹介してくださいました。
 年収100万円の人は1万円。300万円なら3万円。1億円なら100万円。
 この話を聞いて以来、私も毎年思うところに寄付をするようになりました。
 こう考えると自分が今回の震災で募金する金額が何となく見えてきませんか。
 これからも一人ひとりができることをやっていきましょう。
 ガンバレ日本!!!