紳也特急 142号

~今月のテーマ『話術?』~

●『受け止め方は多様』
○『ワハハ本舗』
●『YouTubeの面白さ?』
○『自分を見つめる面白さ』
●『自分の体を大切に』
○『こう伝えたいデートDV』
●『持ち物より持ち主が大事』

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●受け止め方は多様
 先生のことどこかで拝見したことあるなと思いながら聞いていて「コンドームの達人」という言葉で気づきました。YouTubeで拝見していました。先生のお顔。あの再生数の3回は私です。(記憶に残るYouTube!)
 「ちゃんと人の話を目を見て聞く」という当たり前のことができているようでできていないのだと気付かされました。(そうしていたんですね、わたし)
 先生が「思いついたことをすぐ発言するくせをつけるといいよ」「正解を教える人じゃなくて、答えにすぐ反応したり、感謝できる人になりなさい(そんなことは言っていないのですが・・・)」とおっしゃっていたのが、最近なまけ始めている私に刺激を与えてくれました。
 今日の授業はすごく共感できました。私が中学生の時、引きこもっていたからです。あの時の自分は、人とのつながりを拒否していましたが、心の中でつながりを求めていました。今の自分は、積極的に、人に関わるようにしていますが、まだ、時々、こもりたくなることもあります。しっかり自分とも向き合いつつ、人ともふれあっていたい。(次に話すのはあなたの番)
 このように好意的な反応が多い時に、よく学校の先生に「岩室先生の話術を見習わなくては」と言われます。しかし、人が話を聞く場合、もちろん話術もあるかもしれませんが、一番は内容ではないでしょうか。この1か月は何かと「話術」について考える機会が多かったので今月のテーマを「話術?」としました。

『話術?』

○『ワハハ本舗』
 先日、いきなりで「ワハハ本舗の○○と言いますが」という電話がありました。「ワハハ本舗」というのはどこかで聞いたことがあると思いながら、「そうだ、柴田理恵さんや久本雅美さんが所属しているやつだ」と気づき、お会いすることにしました。もっとも、基本的にはどなたであっても関心を持ってくださった方とはお会いしていますが。話しを聞くと、コンドームのことをいろいろと調べる中で私のHPやYouTubeの映像にたどり着いた、「コラアゲンはいごうまん」という芸名の方でした。
 お会いしてビックリ。私自身が勇気づけられ、自分自身を振り返るいい機会をいただきました。コラアゲンはいごうまんさんは自分が体験したことを話のネタにする、ノンフィクションスタンダップコメディアンだそうです。どうしてこのようなノンフィクションをネタにコメディアンをすることになったのか。そこにはある意味私が考えている講演方法に共通する視点がありました。
 奇想天外な「ネタ」も面白いでしょうが、面白い「ネタ」を開発(?)できる人はプロの世界でも少なくないようです。コラアゲンはいごうまんさんは自分自身の、彼が出会った一人ひとりの経験(ノンフィクション)に秘められた面白さを「ネタ」にするという発想で仕事をされていました。今回はコンドームを徹底的に調べる中で、「コンドームの達人」のHPにたどり着き、話を聞きたいと来られました。

●『YouTubeの面白さ?』
 コラアゲンはいごうまんさんが私のYouTubeの映像を見て「面白かった」と言ってくださいました。プロのコメディアンが気に入ってくれたとなるとやはり「どこが?」とお思いますよね。なんと、画像を良くした方の「コンドームの達人」の出だしでした。コンドームの達人講座を収録する際に、別に原稿を用意していたわけでもなく、ぶっつけ本番でやっただけでした。それも映像を見ていただければわかりますが、ある事務所で、特別な部屋を用意した環境ではないところでの撮影でした。その出だしで私が「コンドームを装着する前に、まずペニスの準備をいたします」と切り出しているのが面白かったようです。
 改めて見ると、確かにそのように言っているのですが、そこが面白い人もいるのですね。関西弁風に突っ込むと、「ペニスを準備せんかったらコンドームをどこにかぶせんねん」となるのでしょうか。コラアゲンはいごうまんさんは私と同じ京都生まれで、彼曰く、「岩室さんはやっぱり関西人でんな」とのことでしたが、個人的にはあまり関西人を意識したことはないのですが・・・・

○『自分を見つめる面白さ』
 コラアゲンはいごうまんさんは「コンドームの達人」の生い立ちから、動機、目標、挙句の果てはコンドームの好みまで突っ込んできました。それも彼自身の経験を通したコンドームネタを作り上げるために(と書きながら、実は「ネタのため」という言葉は結果としてついてきたことであって)、彼自身が興味を持ったことにどん欲に知りたい、教えてという感覚がひしひしと伝わってきました。
 私も誰かの生き様に興味を持つと、つい、「でどうしたの」というように突っ込んでいます。しかし、「岩室紳也が岩室紳也を客観的に見ている場面というのはあるようであまりありません。それをコラアゲンはいごうまんさんがプロの目線で岩室紳也を分析し、それをネタに喋ってくれる。これは、自分ではなかなかできない、「自分を見つめる」面白さかなと思い、協力をさせてもらいました。

●『自分の体を大切に』
 実は私も同じようなことをしていました。講演に行った学校の若い先生が、「ぜひ生徒たちに自分の体を大切にするように伝えてください」と切り出してきました。いろいろ話しているうちに「自己肯定感が大事ですよね」とも言っていました。さらに講演の前日にコラアゲンはいごうまんさんも聞いてきた「岩室先生の人生の、性教育の目標は何ですか。生徒たちに正しい知識を、間違った方向に行かないように伝えることですか」と聞かれた時に、思わず前日も語っていたように「目標はありません」と繰り返していました。「えっ???」とびっくりしていた先生に思わず「先生の目標は?」と聞いたところ、生徒たちに自己肯定感を持ってもらって、自分を大切にできるようにしてもらいたいという話をしてくれました。
 私は自分が体験したこと、自分が実践したことしかわかりません。屁理屈はいくらでも作れるでしょうが、正直なところ、私自身「自己肯定感」という言葉がストンと心の中に落ちたことはありません。人生の目標も特にありません。そもそも医者になったのも人の勧めに沿って受検したら受かっただけのことでした。だから思わず、「先生はどうして『自分の体を大切に』といえるのですか」と聞いたところ、何と拒食をはじめ、様々なつらい思いをされてきたとのことでした。それならなおさら「結論」だけを言うのではなく、ご自身の昔の経験を含めて生徒さんに語っていただければ、生徒さんたちも何かを学び取ってくれるのではないでしょうか、と話していました。

○『こう伝えたいデートDV』
 自分自身のデートDV経験をこれからのデートDV防止に役立てたい。そんなメールが来ました。でもその方が伝えたいと思っている「デートDVは悪いこと」にどことなく違和感がありました。伝えたいという内容だけを読むと、まるで「デートDV根絶作戦」のスローガンのようなメッセージでした。しかし、その方のメールに書かれていた経験こそ、岩室紳也には語れない、いろいろと学ぶべきことがありました。
 「ちょっと周りと違うけど、しょうがない、好きだし。」と思っていた。でも正直かなりつらかった。それでも付き合ったことを後悔はしていない。何故だろう。あの頃のことはあまり人には話したくないし、当時も誰にも相談できなかった。最近、あれがデートDVと言われていることに気づいた。
 でもそういう言葉で片付けてしまうのはいやだと思っている。きっと私のように、自分と相手との関係に疑問をもちながら恋愛、SEXをしている子はたくさんいるんだろうな。あの時相談できる人がいれば、あなたは悪くないよといってくれる人がいれば、どんなに救われただろう。(メールから読み取れる体験をまとめるとこうなりますよと返事をしました)
 こんな話を中高生は聞きたがっているのではないでしょうか。

●『持ち物より持ち主が大事』
 コラアゲンはいごうまんさんもこの言葉に感動してくれました。私も大切にしている家内がくれた素敵な言葉です。話術より中身が大事。そうです。話術だけでは人に受け入れてもらえません。
 コラアゲンはいごうまんさんとコンドームの達人が今年のAIDS文化フォーラム in 横浜でコラボします。2011年8月5日(金)ご期待を!
 8月24日のコンドームの達人と行くコンドーム工場のツアーにもコラアゲンはいごうまんさんが来てくれるといいな!!!