紳也特急 145号

~今月のテーマ『「手がいい、TENGAいい』~

●『疲れていますね』
○『コンドーム工場見学ツアー大盛況』
●『結局、やっぱり、コンドーム』
○『手がいい、TENGAいい』

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●『疲れていますね』
 学会で私の写真を撮ってくれた方が「写真をみると疲れているのが良くわかりますよ。ちょっと心配です。心身ご自愛を」とメールをくださいました。外来で診ている患者さんにも「先生、疲れています?」と心配されてしまいました。
 疲れに追い打ちをかける講演依頼も届きました。
 「旅費込みで5,000円でお願いします」。
 やんわりとお断りしましたが、高校生だって時給800円という時代にこれはないんじゃないと思いました。本当に常識が通用しない人が本当に多くなりました。
 確かに東日本大震災後仕事は増える一方で従来業務もあり、寝不足、休みなしの状況が続いています。そんな中でパソコンが壊れ、新しいのに入れ替えることを楽しみつつ、でも結局は書斎にこもりっぱなし。56歳という年齢になったのでそろそろ方向転換をしなければと思いつつ、やっぱり原点はコンドームであり、性なんだということを感じる機会が続きましたので、それにちなみ、今月のテーマを「手がいい、TENGAいい」としました。

『「手がいい、TENGAいい』

○『コンドーム工場見学ツアー大盛況』
 このメルマガでも紹介したコンドーム工場見学ツアーが大盛況の中実施されました。それにしても一人7,000円を払って、丸一日つぶすこんなツアーに人が集まるのだろうかと内心心配していました。確かにそう経験できるものではないにしても物好きの方がどれだけいるのだろうかと思っていたら、とりあえず30名を超え、結構もりあがりました。遠く神戸から参加してくれた人もいれば、何と栃木県真岡市からわざわざ出発地点の東京品川まで上京し、バスも東京駅で降り、飲み会も参加してくださった貴重な方もいました。その方の熱意がまたブログに紹介されています。
 http://blog.goo.ne.jp/kudo89in/e/f8fde33e51a4cd52802e39c48199aaa7
 それにしてもバスに乗り込むなり、「あとは岩室先生にお任せします」という主催者のめちゃ振りで結局往復のバスの中、ずっと司会、兼講師、兼回答者、兼ガイド(ガイドとして東京スカイツリーです。記念写真をなどと紹介していました)として乗客の方を向きながらしゃべっていました。コンドームについての話だけではなく、おちんちん外来での包茎の扱い方や家庭での性教育の方法論、さらにはセクシュアリティ等々、本当に幅広いトークをしっぱなしの5時間(バスに乗っている時間で食事や工場見学を除く)でした。
 参加者はコンドーム、セックス、ゲイ、包茎、等々の言葉を覚悟して、というか期待して来ているでしょうが、一番迷惑をこうむったのがバスの運転手さんだったようです。朝から晩まで客席から聞こえてくる耳慣れない言葉にお付き合いいただきつつ、交通事故を起こさなかったのは、「さすがプロ魂」とみんなが絶賛でした(笑)。

●『結局、やっぱり、コンドーム』
 今回のツアーで皆さんと話す中で、私がコンドームにこだわった原点を思い出しました。最近の私は十代の人工妊娠中絶が減ってきたことや、草食系男子の問題、さらにはこころの病の問題などについて関わる中で、また、実際にHIV/AIDSへの関心が低くなる中で、大人向けの自分自身の講演の中にあまりコンドームを取り入れていなかったことに気づかされました。以前はそれこそみんなで「コンドーム」と声を大にして連呼するような講演会もやっていたのですが、最近はコンドームよりもこころや絆、関係性といったことを話すことが多くなっていました。
 しかし、コンドーム工場の見学をしたいという方々はやはり尋常ではないぐらいコンドームに関心を持ってくださっていて、コンドームにまつわる様々な質問が出ました。これまで私が受けた質問と格段異なるわけでもなかったのですが、素直にコンドームのことを知りたいという集団に囲まれ、「コンドーム」、「コンドーム」と連呼していた純粋な自分を思い出しました。HIVは性感染、STIである、性感染するHIVを予防するには「ノーセックス」か「コンドーム」しかないのです。これは紛れもない事実です。検査をしてもウインドーピリオッドの問題があります。シンプルに言うなら「ノーセックス」か「コンドーム」だけです。難しい話をこねくり回すのではなく、このシンプルなメッセージをこれからも若者たちに伝えようと思いました。

○『手がいい、TENGAいい』
 一方で大人たちに伝え続けなければならない男たちの変化についても忘れていたことがありました。膣内に射精が出来ない男たち。きちんとしたマスターベーションが出来ない男たち。彼らに対して「手でしよう、マスターベーション」というのは伝え続けてきたのですが、もう一つ使ってもいいものがありました。それがTENGAでした。
 何年前だったか、はじめてマスターベーション補助器具のTENGAを知り、膣内射精障害を含めた間違ったマスターベーションのトラブルの解消法として活用させてもらっていました。また、近くのスーバーの薬局にTENGAが陳列されているのを見て、十分市民権を獲得していると安心していました。しかし、日本思春期学会総会でTENGAの方々と久しぶりに会い、改めて手がいい(TEGAII)だけではなく、TENGAもいい、ペニスにやさしいマスターベーションの仕方をきちんと伝え続ける必要があると反省させられました。原点に回帰させていただいた夏でした。