~今月のテーマ『「うつ」は生活習慣病?』~
●『元気が出るメール』
○『自分の「うつ」を治した精神科医』
●『答えがすぐに示せなかったらバッサリ』
○『根本原因と向き合うストレス』
●『ストレスの除去ではなく、ストレス耐性の向上を』
○『地域力でアル中克服』
●『「うつ」は生活習慣病』
○『はまってけらいん、かだってけらいん』
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●『元気が出るメール』
こんにちは(・∀・)
岩室先生に感謝したいことがございましてメッセージさせていただきました。
中学の時私は幼なじみだった男の子と付き合い初めてSEXもしました。彼は私のためにもお互いのためにもちゃんと性行為について本を読んだりたくさん勉強してくれました。でも私はある程度の事は知っててもちゃんとしたゴムの付け方や保存のしかたなどまだまだ知らない事がたくさんありましたそんな時先生の講演を聞きとても心に残り、先生の講演を聞いた後、私は彼氏と先生のコンドームの達人講座をみました。女の子もゴムの付け方ちゃんと知っとかなきゃいけないこと。いろいろ知りました。
4月から高校生になり、先生の講演もう一回聞きたいなと思っていたら今日先生が私の高校に来て講演して下さってとても嬉しかったです。帰って岩室先生が私の学校に来てくれたんだ!彼氏に自慢しました(笑)。彼氏も、いいなぁ。ずるい!!岩室先生の講演もう一度聞きたかった(´`)と言っていました。もう一度話を聞きたいと思うぐらい先生の話は2人にとって心に残るお話でした。
先生に出会う事がなかったらもしかしたら傷つけあうようなSEXをして別れていたかもしれない。今だから思います。彼氏とは最近SEXはあまりしてません(^^*)。まだ高校生、好きな人とHするのも悪いことではないけれど今しかできない付き合い方や経験私はあると思います(^∀^)私は彼の事が大好きです。先生の事も大好きです(笑)。うそです(笑)。
これから性行為について知る高校生中学生の心に残る講演なさってください。
うまくまとめられず、しかも長文になってしまい申し訳ございませんでした。
岩室先生、本当にありがとうございましたm(__)m
何だか力が湧いてきます。元気が出ますよね。うつの人は元気がない。元気が出ない。どうしてでしょうか。あるMLで『自分の「うつ」を治した精神科医の方法』(宮島賢也:河出書房新社刊)を読み、最近増えている「うつ」は生活習慣病だと気付きました。そこで今月のテーマを『「うつ」は生活習慣病?』としました。
『「うつ」は生活習慣病?』
○『自分の「うつ」を治した精神科医』
MLはありがたい。「精神科医の宮島先生の講演があります」といううれしそうな投稿があると、被災地でのこころのケアが片時も頭を離れない自分にとって「宮島って誰?」と思わずネットで検索していました。そうしたら、自分で自分の「うつ」を治したと精神科医だと知り、ますます興味津々。早速Amazonで本を取り寄せ、翌日には読んでいました。
医師になった人の大半はガリ勉一辺倒で、よい成績をとって医学部に入学できた人たちです。
薬では僕のうつも患者さんのうつも治せない。
精神科医は「こころの専門家」ではない。
病気の原因を探らずに、薬を処方する不思議。
やっと『精神科医はこころの専門家ではない』と公言している精神科医に出会えたという思いでした。私は被災地で意地悪にもこころのケアチームの方々に、「精神科医は、臨床心理士は『こころのケア』のプロですか?」と聞き続けていました。なぜならばその道のプロであれば、宮島先生の言葉を借りれば、被災地で蔓延しているうつの原因は何であり、それを克服する上で効果的な方法は何かを論理立てて教えて欲しかったからです。もちろん、特効薬などあるはずもないことは誰でもわかるので、「簡単じゃないんですよね」という答えを期待してのことでした。実際、多くの精神科医や臨床心理士の方々は真摯な姿勢で被災者、被災地に関わり、「われわれができることは限られている」とおっしゃっていましたが公言していませんでした。それは、こころのケアのプロがいないという不安を蔓延させたくないという思いもあったと思います。
●『答えがすぐに示せなかったらバッサリ』
宮島先生がおっしゃるように「うつ」を治すには医療者も、ご本人も、そして周りの人たちも「うつを治す」という同じ目的に向けていろんな取り組みをするしかありません。また、本当に具合が悪くなった人を「精神科医にかかっても治りませんよ」というのは少し乱暴すぎますし、実際に精神科医や臨床心理士の方々が支えることで「うつ」を克服できた人も少なくありません。
ただ、今こそ「うつ」の一次予防、すなわち、そもそも「うつ」にならない方法を模索する必要があります。ところが、このように提案すると「うつの一次予防とは、そもそも具体的に何を予防するのでしょうか。今までの一次予防の中で当事者のコントロール可能でないところに策を講じで予防に成功したという事例はあるのでしょうか」と突っ込んでくる人がいます。特効薬があれば誰だって既にやっています。しかし、このような突込みは対策を考えようとしている人の気持ちを萎えさせますし、「うつの一次予防」の意味がよくわからない人には「そんなの無理」という印象を与えるだけです。これは今の日本だけではなく、世界のあらゆることでの潮流かもしれません。原発問題しかり。消費税問題しかり。社会保障問題しかり。
○『根本原因と向き合うストレス』
どうしてこのように「バッサリ」というのが多いのでしょうか。「うつ」の根本原因を探っていくと原因は多様で、複雑に絡み合い、結論として「これだけが原因です」というものは見えてきません。このことはうつ対策に取り組もうとしている人たちにとっても、うつを理解しようとする人たちにとってもすごくつらいことです。原因が一つではないということは対策も一様ではありませんし、シンプルな指導や対策ではうつは解決しません。
原発の問題も、原発がない方が安全です。消費税も増税しない方が楽に決まっています。年金も60歳からもらえれば最高です。医療費も無料がいいでしょう。でもそう簡単にはいかない。「沖縄から基地を撤去」は本当に理想です。厚木基地で訓練があるとわが家も轟音にさらされます。しかし、基地の持ち回り構想は絶対に実現しません。一番簡単な方法は表面化した問題を除去することです。原発、消費税を廃止し、年金を増やし、医療費を無料化する。このすべてが実現できれば誰も苦労はしません。
できることを、できる人が一つずつ解決するしかないのですが、うつは増え続けるし、国民の不満も増え続けます。結局のところうつ対策に取り組む人も、真面目に政治問題を解決しようとする人も多大なストレスや軋轢を抱えることになります。まじめな政治家は政権に着くとそのストレスや軋轢を背負うのは政治家しかないということに気づくのではないでしょうか。そもそも選挙というのは「どっちが、誰がいいか」を選ぶシンプルな解決策です。複雑化した問題の根本原因と向き合うことを避けているマスコミ情報を鵜呑みにすると百害あって一利なしということをマニフェスト総崩れの前回の選挙が示してくれていると思います。
●『ストレスの除去ではなく、ストレス耐性の向上を』
宮島賢也先生の「自分の『うつ』を治した精神科医の方法」は本人のストレス耐性は変えられるということの証です。もちろん、本人だけではなく他者(薬を使わない宮島先生など)の支援も必要でしょうが。宮島先生という症例の場合の「うつ」の対処法はストレスの原因の除去ではなく、ストレス耐性の向上でした。今の社会は他人が原因となる、わかりやすい表面的なストレスの除去にやっきになっていますが、自分自身が対処しなければならないストレス耐性の低下には無頓着です。というかそもそも根本原因の検証が不十分なのです。
○『地域力でアル中克服』
被災地は本当に勉強になります。毎月陸前高田市と女川町に入っていますが、そこで見聞きすることはどれも日本全国でシェアしたい、素晴らしい事例が次から次へと生まれています。津波の被災地では1メートルの海抜差で家が流されるか残るかの違いがありました。その結果、自分が所属する部落で一軒だけ残された、一人暮らしの職を失った男性がアルコール漬けになっていました。もちろんいろんな人が心配をし、それなりの機関につなごうとしていましたが状況は悪化するばかりでした。しかし、隣の、少し上の部落で獅子舞の音が聞こえるのを耳にし、そこに混ぜてもらったところ、お酒の量は減り、仕事に着くようになり、いまは元気に暮らしているそうです。阪神淡路大震災の際にも同じような事例は各地で報告されていたようで、乱暴な困り者の男性が祭りのリーダーを任されたところ、地域のリーダーになり問題は解決したとのことでした。
●『「うつ」は生活習慣病』
かつて成人病と言われた高血圧、糖尿病、がんなどは必ずしも成人になってからおこるのではなく、子供のときからの生活習慣(食生活・運動・喫煙)の積み重ねと、その人の持っている遺伝的要因(遺伝子異常・加齢・素因)、さらに環境要因(運動環境不足・病原体・有害物質・ストレス)が重なり合って発症することから様々な対策が重層的に行われることが重要だというのは多くの関係者の共通した認識になっています。
性感染と言われたHIV/AIDS、クラミジアなども必ずしも成人になってからおこるのではなく、子供のときからの生活習慣(コンドームを使わない習慣、コミュニケーション能力)の積み重ねと、その人の持っている遺伝的要因(本能的性欲、セクシュアリティ、年齢・加齢)、さらに環境要因(他人事意識・病原体の蔓延・セックスが当たり前というピアプレッシャー・性情報の氾濫)が重なり合って発症するるため、様々な対応が不可欠になっています。
うつも必ずしも被災したからおこるのではなく、子供のときからの生活習慣(アルコール、コミュニケーション能力・集わない、個を楽しむ生き方)の積み重ねと、その人の持っている遺伝的要因(男としてのプライド・セクシュアリティ・年齢・加齢)、さらに環境要因(被災、孤立、仮設住宅、失職、他者の回復)が重なり合って発症すると考えれば、対策の方向性も見えてきます。 こう考えると対策は多様でなければならず、うつは一朝一夕で克服できるものではありません。
○『はまってけらいん、かだってけらいん』
陸前高田市の復興を保健医療福祉面から議論している未来図会議では、いろんな人が集い、いろんなことを語り合うことが大切だという思いから、地域で行われているあらゆるイベントにそのような思いを入れ込みたいということになり、気仙言葉で「はまってけらいん(みんな寄ってらっしゃい)、かだってけらい(語りましょう)」というのぼり旗をつくってその思いを広げる運動をやりましょうということになりました。そんなのぼり旗があったら何となくその輪に入りたくなったり、あっちもいいけど、うちでも「はまってけらいん、かだってけらいん」やりたくなりませんか。
がんばれ東北。がんばれ陸前高田市。がんばれ女川町。