紳也特急 161号

~今月のテーマ『はまって かだって』~

●『あけましておめでとうございます』
○『はまってけらいん かだってけらいん』
●『はまれない人 かだれる人』
○『お碗に指が』
●『返事が遅くなり申し訳ありません』
○『コンジローマなのに・・・』

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●『あけましておめでとうございます』
 2012年は皆様にとってどのような一年でしたか。そして2013年はどのような年になるのでしょうか。私にとって2012年は若者たちが2極化していることをいろんな場面で実感させられた年でした。
 包茎で悩むどころか、「包茎」という言葉も知らない、間違ったマスターベーションの仕方の結果として射精障害になる男子が急増しています。妊娠したら生理が止まるということを知らないためか、緊急避妊の対象外の妊娠確実という相談が多くなっています。若者たちのコミュニケーション能力の低下も深刻化し、おしゃべり好きだったはずの女子でさえも友達とメール以外でコミュニケーションがとれず、男子はメールする相手もおらず、2次元の世界に没頭する子が増え続けています。講演で子どもたちにマイクを向けると、質問も終わらない内に考える気もなく、「わからない」と反応する子がすごく多くなっています。
 関係性が希薄化し、人間関係の中でもまれてこなかった結果、生きる力が育っていない若者たちが増えていると思っていたら、たくましく育っている若者たちが東日本大震災の被災地にある陸前高田市立第一中学校にいました。私のコンドームの弟子で、発災直後から私を引き連れて陸前高田市に入り続けている未来型コンドームの達人の佐々木亮平さんとのトーク形式で3年生に性教育をさせてもらいました。まだ発災から1年8ヶ月しかたっていない中で、両親を、友達を亡くしたり、家を流されたりという彼らにどのような話をすればいいのか、緊張しながら話し始めたのですが、こちらの心配は取り越し苦労でした。彼らは、彼女らは実にたくましく、面白い所では大笑いをし、真剣に聞くところではシーンと聞いてくれていました。あれだけの被災を受けた中で彼らがこんなにたくましく育っているのは、同じように家族や家を失ったものもいれば、家族や家が被害にあっていない仲間たちもいるというある意味理不尽な環境の中で、お互いが関わりながら、語りながら、境遇は違ってもお互いの苦しさを感じながら毎日を生きているからだと強く実感させられました。その陸前高田市で「はまってけらいん かだってけらいん運動」が始まりましたので、今月のテーマを「はまって かだって(一緒に語ろう)」としました。

『はまって かだって』

○『はまってけらいん かだってけらいん』
 気仙(けせん)地域と聞くと私には宮城県気仙沼市のイメージが強いのですが、気仙沼市と隣接する岩手県陸前高田市に気仙町という地区があり、このあたり一帯で使われる言葉は気仙語と呼ばれています。気仙語で「はまって」というのは「輪に加わり一緒になって」、「かだって」というのは「語って・話をして」、「けらいん」は「してください(丁寧に、やさしく頼む場合に使う)」という意味だそうです。この「はまってけらいん かだってけらいん」を合言葉に陸前高田市では、地域で、人が集い、語り合うことでお互いのこころがケアされるという考え方のもとで、自殺予防から地域への愛着を育む運動を展開しようとしています。
 人はいろんなストレスを抱えますが、他の人と話をしている内に、そのストレスを忘れたり、気が付けばストレスを、つらさを乗り越えたりして、次のステップに向かって踏み出しています。今回、陸前高田市立第一中学校の生徒さんに話をして痛感させられたのが彼らの生きる力でした。想像を絶する体験をしたにもかかわらず、2年も経っていない中で、今を生きる力を育んでいました。面白いことがあれば笑い、悲しいことがあれば涙を浮かべる。
でも決して笑うのも、涙するのも自分一人だけではないという、誰からともなくお互いを支え合っていることを感じさせていただきました。私たちの話で一人ひとりが感じたことを隣の仲間とちゃんとシェアしていました。彼らはこの2年余、いろんな経験を「はまって かだって」いたようです。そしてお互いを支えることの大切さを肌で感じ、その力をちゃんと身につけていました。

●『はまれない人 かだれる人』
 「僕は今高校1年なのですが、彼女がセックスしようと言うのでしたいんですけど場所や妊娠などを考えると不安になります。どうしたらいいのでしょうか?」
 「間違ったマスターベーションをしていたので、TENGAを使って治そうと思ったのですが、射精ができませんでした。僕は射精障害なんでしょうか?」
 この様な相談が来ると日本の未来はどうなるのだろうかと不安な気持ちになります。その一方で、
 「セフレの人もはなしをきいていたのでゴムをまいかいつけるようになりました。友達はいろいろ相談してたのでセフレやめるっていったらいーとおもうよっていってくれました。」というメールはむしろ頑張れ、大丈夫だと思えます。前の二人は自分で考え自分で決められなかったり、結論を急いだり、しっかりと自分がおかれた状況を客観的に見ることをしないまま、考えないまま答えを求めてきています。それに対して後者のひらがなが多く、セフレが当たり前のようなちょっと心配な女の子ですが、ちゃんと友達がいて、相談もし、結果も報告して自分の選択が間違っていないかを確認しています。この女の子の方がよっぽど将来が明るいと思いませんか。

○『お碗に指が』
 講演先のある学校でお茶を出してくれた時のこと。何と湯呑み茶碗の中に親指を入れて持ってきてくれたのにビックリ!!! 確かに「お茶くみは女の仕事じゃない」という感覚や、「お客さんにお茶を出しません」という自治体が増えました。しかし、出すならちゃんと出し方を勉強して欲しいと思いますが、教えられる人もいなくなった結果が「お碗に指」になったのでしょう。確かにペットボトルからしか飲まなければ湯呑み茶碗の持ち方もわからなくて当たり前です。ちなみに、講演後のお茶も「お碗に指」状態で出てきました。
 「お碗に指」の記憶も鮮明に残っている同じ週の内に、お偉い先生たちと行った某高級ホテルの中華料理店で、チャーハンを取り分けてくれたお碗に親指を入れて目の前に配膳!!!
 でも、お碗の持ち方はその学校が職員に、そのホテルが従業員に教えることではなく、いろんな人と「はまって」いるうちに、気が付けば誰かが「かだって」くれて覚えることです。でも家族でお茶も飲まない、食べ方のマナーにも気を使わないとしたら「お碗に指」が一番お碗を落とさないので理論的な持ち方なのかもしれません。笑えない冗談ですが、ノロウイルスが猛威を振るっているのは「お碗に指」が原因かもしれませんよ。
●『返事が遅くなり申し訳ありません』
 メール相談をしてくる人で、このように書いてくる人がこれまた増えました。子どもたちの間で問題になっている5分ルール(ドコモのHPに出ています
に縛られている大人もふえているのでしょうか。ネット上での相談でも待てない人がいました。
相談者Aさん
 今、生後4ヶ月の男の子がいます。gooさんのサイト(岩室監修で発見)におちんちんの剥き方が載っていたので早速本日からオムツ替えのたびに20回ずつやりました。↓
 そしたら、2回目のオムツ替えのときにツルッと剥けました。私は女で、怖かったのですぐに戻して、それ以降は全て見える前に戻す→剥くの作業を20回繰り返しています。(戻らなくなるかもしれないのが怖くて・・・)今は両手で剥いています。皆さん、洗うときはどのように洗っていますか?
・洗うときは石鹸をつけますか?
・洗うときは手?ガーゼ?
・剥いた先っちょは触ると痛いですか?
・シャワーの勢いは痛いですか?
・普段、オムツ替えのときは剥いて先っちょも拭きますか?
 今、息子のおちんちんは皮の先っちょが赤くなってます・・。この剥いて戻す作業(オムツ替えのとき)はいつまで続けるのですか?
 質問ばかりですみませんが、アドバイスをお願いいたします。シングルマザーで聞ける相手がおりません。すぐに回答ほしいです
回答者Bさん
 はっきり言って、わざわざ剥いてまで洗う必要はありません。やるにしても月1回。そもそも不潔であるというなら、女の子の割れ目にいちいち指突っ込んで洗うんですか?ってのと同じレベルでしょう。まあ、外皮はすれますし、かぶれるので、そこは洗うか、拭いてもいいのでしょうが。先端が赤いのは、むしろ剥きすぎて、突っ張ってるから、かぶれやすくなってるだけかも。もし剥くなら、真性包茎でないかどうか(癒着の有無)の確認程度でしょう。まあ、それで異常なら、小児科に相談すればいいだけです。即手術・・・という話でもないので。まあ、最近は、医療に無意味な主義主張を入れる変な人もいますからね。気をつけないと。で、そういうことは旦那に聞けばいいのでは?
相談者Aさん
 ありがとうございます。質問にも書いてある通り、シングルなので旦那はおりません。もう剥いてしまった場合はどうしたらよいのでしょうか?酷いことをしたと反省してます・・・。
岩室紳也の感想
 Bさんの答えもまったく論理的ではないのにAさんとBさんだけで完結。もっといろんな人と「はまって かだって」して欲しいです。それにネットだとその人がどのような人かわからないのでやっぱり顔が見える関係の仲間で話し合いましょうね。

○『コンジローマなのに・・・』
 結局のところ「はまって かだって」という経験が不足していると思わぬことがおきるものです。医者も若者の変化を踏まえて治療に当たらなければならないのを痛感させられた相談がありました。
彼氏にセックスを迫られたらなんとペニスにできものが!
C子:何これ!
D夫:今治療をしているコンジローマ。
C子:セックス嫌だよ!
D夫:じゃあフェラを!
でそのまましちゃったとの相談。どっちもどっちとですが、D夫を治療した医者も「尖圭コンジローマは今はっきりしているイボ以外に周りにウイルスが潜んでいることがあるから治っても半年ぐらいはセックス禁止」ぐらいのことを言ってもらわないと困ります。
 若者たちが大きく変わったという印象の2012年でしたが、2013年は被災地のたくましい子どもたちに学び、「はまって かだって」運動をひろげるべく頑張りたいと思います。
 本年もよろしくお願いします。