紳也特急 173号

~今月のテーマ『別れなさい』~

○『生徒さんからの感想』
●『明けましておめでとうございます』
○『感謝のメール』
●『きっかけ』
○『コンドームを着けない主義?』
●『一つひとつを着実に』

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○『生徒さんからの感想』

●性のことについての講演ということで、正直に言うと自分が知っていること以上がでないのでつまらないんだろうなって思ってました。でも、性のことなのにすごく楽しくて、彼女もいるので考えさせられる講演になりました。初めてまともに全部聞けたのですごいと思いましたし、HIVのことも考えて保健所にも行って見ようかと思いました。この講演をたくさんの人に聞いてほしいです。今の自分も含めて若い人にはこの講演は頭に残るし、楽しく正しい知識を学べます。もっと頑張って欲しいです。(高1男子)

●とてもわかりやすく心に響く講演だった。普段彼に対して感染症の心配なことを考えて伝えるということが少なかったことの無責任さを身をもって感じた。自分はもちろん、大人になって結婚したら子どもがほしい。自分の身体、自分・相手の未来のためにも気をつけなければならない。今の自分にそれらが欠けていたことを反省し、今回の講演で学んだたくさんの大切なことを守っていきたい。保健所で無料でHIV検査ができるということなので、念のため今日行ってきます。今まで自分は性についての考え方があまりにも甘かったことを深く反省し、今後二度と軽い気持ちで性交などしないと決めました。(高1女子)

●岩室さんの講演を聞いて、まずSEXは本当に自分のことを愛してくれてる人としかやったらいけないと改めて思うことができました。自分のことを本当に思ってくれていたら、生で入れることには絶対ならないと思う。そういう人を見つけたいと思いました(笑)。あと男の人が生理の時に気を使ってくれたらうれしいと思う。岩室さんがあの場で男性方に言ってくれたことで男性の生理に対する意識も少し変わってくれてたらいいなと思いました。あとゲイの方がHIVに感染しやすいことにも驚きました。ゴムは大事ですね。(高2女子)

●薬物を友人に勧められた時、110番する必要があると初めて知った。自分にできるかどうかはわからないけれど、万が一の時そうできるように勇気を持ちたい。それから改めて「死」は怖いと感じた。自分は夢がなくて明日からもう何もしたくないと最近まで思っていたけれど、今日の話を聞いて「もっと生きたい」と思い直すことができた。(高3)

 高校生の感想は本当に素直ですね。結論を伝えなくても、自分で考えてくれます。でもズバリ言わなければならない時もあるんだと昨年12月の福山雅治さんの魂のラジオに出た時に思いました。「コンドームを着けない主義」の彼氏の相談をしてきたリスナーに、福山さんがズバリ「別れなさい」と言い切っていました。そこで2014年最初のテーマを「別れなさい」としました。

『別れなさい』

●『明けましておめでとうございます』
 2014年1月1日、皆さんはどうお迎えでしょうか。岩室紳也は58歳4か月になりました。お正月はいろんな意味で区切り、節目となる時期です。
 私の人生はいろんな意味で約10年単位でいろんな節目が来ているようです。1981年に自治医科大学を卒業して9年目の1990年に臨床医と公衆衛生医の両刀使いになりました。そのおかげで1994年に出会った最初のHIV/AIDSの患者さんの在宅ケアを保健所出勤前に行っていたことをつい先日ご家族の方に再会し、思い出させていただきました。2003年にHIV/AIDSの患者さんを診るために22年間勤めていた神奈川県を退職してからまもなく11年になります。その間、民間公衆衛生医として神奈川県秦野市での高齢者対策、千葉県船橋市でのヘルスプロモーションの推進、千葉県浦安市で自殺対策に関わらせていただいていたからこそ、2011年の東日本大震災の被災地、岩手県陸前高田市や宮城県女川町に関わることができました。また厚木市立病院でおちんちん外来では7,000人を超えるおちんちんを診、HIV/AIDSの患者は累積で117名となりました。
 個人面では、住んでいるマンションの管理組合の理事長の2期目を迎えています。黙っていれば1年で代われたのですが、役員が毎年総入れ替えだと築15年で様々な問題が出ているマンションの管理に継続性が担保されないと思い、規約を改正してもう一年行うことになりました。他の理事や住民さんとも仲良くなり、一緒に飲み会をする関係になっています。
 こうやって書くと順風満帆のようにも見えるのですが、今年59歳、来年は60歳を迎えます。昨年末には大学の同級生が急死したとの知らせもあり、無理をせず、与えられた運命を、仕事を、無理せず着実に整理していく必要があると反省させられています。被災地も震災から1,000日が経ったとはいえ、まだまだ役割があるのではと勝手に思っています。ホームページも、PowerPointの資料もちゃんとバージョンアップしないと期待に応えられないですよね。でも、今のままではどの仕事も中途半端になりそうです。だから「柵と別れなさい」と神様が言っているように思います。

○『感謝のメール』
 ある高校の女子学生さんからいただいたメールです。
 私は岩室先生の講演後、たくさんのことを見つめ直しました。以前付き合っていた彼氏のこと。自分の性の知識の無さ。知ろうとすることの大切さ。また、その体験と先生の講演を聞いた感想で、弁論を書きました。その弁論で、県大会で2位、大学受験が重なってしまい出場できませんでしたが全国大会の出場権を獲得することができました。また、その弁論を話すことで繋がることのできた人との出会いもありました。
 現在は看護師を目指して受験勉強を頑張っています。将来は岩室先生のように『性について恥ずかしがらずに考えること、話すこと』の大切さを伝えていける活動をしていきたいと思っています。私にたくさんのきっかけを与えていただき本当にありがとうございました。
 彼女の原稿「きっかけ」の一部を了解をいただき紹介します。

●『きっかけ』
 「あなたはご両親の間に授かって生まれてきたお子さんですか?それとも・・できちゃったお子さんですか?」先日、私が以前お付き合いしていた1つ年上の先輩ができちゃった結婚をしたという話を聞きました。相手の女の子は私と同じ高校3年生。彼女は高校を中退したそうです。私はこの話を聞いて、心の中に何か突っかかるものがあるような、何とも言えない気持ちになっていました。
 そんなときに病院に勤務する傍ら青少年の性教育に携わっている「コンドームの達人」こと岩室紳也先生のお話を聞く機会がありました。岩室先生のお話が、私にとって「性」というものを考えるきっかけになりました。
 講演中、先生は突然、ある高校1年の女子生徒に聞きました。「妊娠したら、身体にどういう変化が起こりますか?」質問された生徒は答えることができず黙ってしまいました。恥ずかしくて言えないというよりも、知らないといった顔をして。みなさんは「妊娠したら生理が止まる」ということが中学校の教科書に載っていないことを知っていますか?このことを習うのは高校2年生です。
 以前、家庭科の授業で子育て支援センターに行った時、ある一人のお母さんがこんな話をしてくれました。「私はできちゃった結婚だったけれど後悔はしていないし、今とても幸せです。だけど私は、あなたたちに順番をきちんと守り結婚をして、子供を産んでほしいと思います。リスクがあったり、自分の夢だったり必ず何かを犠牲にしないと、子育てはできないからです。自分がそういう立場に立った時に私の言葉を少しでも思い出してくれたらうれしいです」このお話を聞いて私は、妊娠した時に、考える時間が無いまま出産や中絶するのと、そうでないのではやはり全く違うなと感じました。相手に妊娠したことを言えず、家族にも内緒で出産し、正しい知識がないまま子どもを死なせてしまったという事件も増える今の世の中。こういった事件を耳にはしても、実際に自分のことに置き換えて考えている人はいったいどれくらいいるのでしょうか?
 今の学生は性について考える機会が少なすぎます。なぜか?学校でも家庭でも、あえて性の話題を避けているからです。でも本当は、性教育はセックスの話ではなく、いのちの話です。どんな理由があったとしても「いのち」は尊重されなければならない。授かったいのちに、責任を持たなければならない。「知らなかったから」「教えてもらってないから」では済まされません。
 みなさんも「性」について、「いのち」について、考えてみませんか?すべての妊娠が、望まれた妊娠であるように。そして、生まれてくるすべての小さな命が「できちゃった」ではなく「授かった」といわれるために。

○『コンドームを着けない主義?』
 福山雅治さんがコンドームを着けない主義と言う彼氏とは別れなさいと言ったのを聞いたり、「きっかけ」というメールをもらったりする中で、岩室紳也ができることは何かを改めて考えていました。ラジオという「きっかけ」、講演という「きっかけ」があればこそ人は考え、つながり、変わることが出来ます。しかし、そのように考える「きっかけ」がない人が「主義」などというとんでもない言葉を覚え、平気で使うのですね。この話を聞いた後に「こんなバカな『主義』が横行している」という話を講演の中に入れるようになったら、聴き手の反応が更によくなりました。おそらくいろんな人がいろんな「主義」を安易に主張しているのでしょう。

●『一つひとつを着実に』
 皆さんは2014年をどのような年にしようとお考えでしょうか。私は昨年の数多の出会いから、「人に言われたらNoと言えない自分」と「別れなさい」と言われたように思いました。陸前高田で始まっている「はまってけらいん かだってけらいん運動」はまさしく、はまって(参加して、集まって)、かだる(語る)には一つひとつの出会いに真摯に向き合わなければならないことを教えてくれていました。その意味でも、2014年は「一つひとつの事を着実に」をこれまで以上に意識し続けたいと思っています。と同時に、少しは人らしい生活を取り戻す1年にできればと思っています。
 本年もよろしくお願いします。