紳也特急 220号

~今月のテーマ『大人に見えない若者たちの現実』~

●『中学生の感想』
○『座間市の事件』
●『秋葉原の事件に学んでいない』
○『有効な広報手段は?』
●『TwitterとFacebookの使い分け』
○『若者の中のルール』
●『SNSは同じではない』
○『人は経験に学ぶ』

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●『中学生の感想』
・始めて聞く言葉が多かったです。
・皮のむき方は知らなかったので知れてよかったです。
・子どもができるには父母がセックスというものをしないとできないことを知りました。
・簡単に性行為をしないようにしたいと思いました。本当に好きな人とだけにしたいです。このお話が聞けてよかったです。
・病気がなくてもコンドームを付ける必要があると知りました。
・ゲイでもエイズになることに驚きました。
・自分には関係ないと思っていたけど、そうじゃないと思いました。
・すごい達人だと思いました。
・危険日や安全日は関係ないことを知りました。
・人に話すことで癒されたり楽になることを知りました。
・一言一言が重く、とても心に残る内容となりました。

 こんな感想もあれば、男子高校生からは

・女は全員たくましいチ〇ポを求めているのだと思っていたが、挨拶ができない男は持てないという話に始まり、女性は対話を求めるのだと聞き、とても驚いた。

 思わずツイートしたり、Facebookで紹介したりしてしまうこんな感想もありました。しかし、ふと気になったのが、このように若い世代の声を日々聞かせてもらっている人はもっといるはずなのに、どうして彼らの危機的な状況に世間は学ばないのだろうかということでした。そこで今月のテーマを「大人に見えない若者たちの現実」としました。

『大人に見えない若者たちの現実』

○『座間市の事件』
 座間市の9人殺害事件についての報道もしかりです。当然のことながらこの件を講演の中で紹介し、自分なりに問題と考えている点を解説しています。何が一番問題かと言うと、大人たちがTwitterをやったことがないということです。やったことがない、経験したことがないものについて「正しい使い方を教える必要がある」と堂々と新聞取材にコメントしている恥ずかしい人たちがいます。事件後、高校生に「Twitterを使っている人?」と聞くと、7割前後が手を挙げます。しかし、先生や大人たちに聞くとほとんどいません。使ったことがない人が使い方について語る資格はあるのでしょうか。

●『秋葉原の事件に学んでいない』
 秋葉原の事件で犯人は「犯行を決意した後は、「誰かに止めてほしい」という気持ちもあり、犯行をほのめかす書き込みを繰り返したが、思いとどまらせるような反応はなく、事件当日、秋葉原に到着後も「みんなさようなら」「時間です」などとする書き込みを残した」と話しています。
 このことを書いた新聞記事を手元に残し、当時からネットというのは「つながっているという、自己満足の錯覚を与えてくれる空間、場だ」ということ訴え続けてきましたが、そのことが伝わっていません。なぜかほとんどの人は「あいつ(犯人)が悪い」、「親の顔が見たい」としか思わなかったようです。でも、よくよく考えてみると、伝わらないのも、考えられないのも当然なのです。人は経験にしか学べず、経験してないことは他人ごとなのです。

○『有効な広報手段は?』
 どんなにいいイベントでも、残念ながらなかなか集客に苦労するというのが事実です。先日、日本エイズ学会と並行して行われたTOKYO AIDS WEEKSのイベントで、蒼井そらさん、ブルボンヌさん、今賀はるさんとご一緒させていただきました。MCがライセンスの二人(ごめんなさい、私は知らない人たちでした)や、トークセッションの後はうじきつよしさんも歌を歌っていましたし、東京都も大々的に宣伝してくださったのですが、来場者数は100人程度でした。
 来ていた方々を見ていると、それなりに誰かとつながっている人たちばかりで、やはり有効なのが「口コミ」だと改めて実感しました。この時期は講演も多いのですが、「伝わっている」と実感できるものは「教育しようとしたこと」ではなく、「岩室紳也が語る自分の、仲間の、患者さんの経験」です。それもマイク一本で語るので完全に「口コミ」です。

●『TwitterとFacebookの使い分け』
 座間市の事件のことが気になり、次のようにTwitterに書き込みました。

 「Twitterしている人」と聞くと生徒の約半数が手を上げる。
 先生たちに聞くとほぼゼロ。
 その大人が「正しい使い方」と言っても説得力なし。
 私は「Twitterは情報や思いを伝える自己満足の手段。誰が読んでいるか、
 思いをくみ取ってくれたかはわからない。
 トラブったらリアルで話そう」と言っている。

 Twitterに書き込んだことをFacebookに自動的に転送するように設定しているので、Facebookに次のようなやりとりがありました。

○○さん:FacebookとTwitterは、ヨーロッパと日本で考え方が違いました(公的機関)。拡散を狙いTwitterを使うのがヨーロッパ。日本人がTwitterに色々書き込むようです。ヨーロッパはFacebookのほうが書き込まれるから使わないと言われました。今、書き込みしてます、すみません。
岩室紳也:私はTwitterで拡散し、同じものをFacebookに転送し書き込まれるのを狙っています。
○○さん:さすが。
岩室紳也:いやいや、ただ機能を便利に使っているだけです。むしろ興味をもったのが、何故ヨーロッパでは「書き込まれる」Facebookを使わないのかということです。ぜひ教えてください。
○○さん:目的が発信のみで、議論するわけでなく、拡散されることがTwitterのほうがあるからだと認識しました。○○委員会のFacebook、それほど書き込みないですがね。(最初恐れていた)しかし、年齢層がFacebookは高く、各世代にというのは難しいですね。日本の広告代理店からレクも受けました。良い意味の拡散をつくるということも教えて頂きました。しかし発信する記事にもよるなぁとか。面白くないなら拡散しないわけで。短くキャッチのきいた言葉で表現できないと難しいかもと考えています。
岩室紳也:なるほど。結局は「考えて使いなさい」ということですね。「結果的に良かった」とか、「結果的にトラブルになった」ではなく。
○○さん:はい。かなり議論しました。国民性でも違うとわかりました。止め時の判断もです。

 このように、どんなものも使いようです。

○『若者の中のルール』
 学校でTwitterをしていることを言うとフォロワーが確実に増えます。しかし、私自身はフォローしてくれた人をフォローしません。なぜなら匿名の、知らない人をフォローする必要があるのかが理解できません。
 ところが、あるフォロワーが「フォローしたらフォローし返すのがルール」と連絡してきたのを見て、「勝手に自分のルールを作って他人に押し付けないでください」と思っていました。私のTwitterのトップを見れば、私は基本的に情報発信ツールとして使っているだけで、フォローしている人たちのツイートもたまに、偶然書き込んでいる時に見ているだけです。しかし、若者たちの間ではTwitterの中にも束縛があるため、結果として束縛のない、裏アカウント、別のアカウントを持つ人が少なからずいます。

●『SNSは同じではない』
 Twitterは匿名が原則で、使っているのはほとんどが若い世代。
 Facebookは実名や顔を出している人が多く、比較的上の、30代以上の世代。
 LINEは広い世代が使っているが、年配者は近親者との便利なやりとりのため、若者はグループの情報共有を含め、いろんな用途で。
 よくマスコミは「SNS」をひとくくりで紹介しますが、全部、利用者も、用途も、性質も違うのに、そのことが理解できるような報道はほとんどありません。

○『人は経験に学ぶ』
 若者たちの実態を知りたいのであれば、彼らの世界に飛び込んだり、少なくとも彼らと一緒に考えたりする必要があります。こう書いてみると、実は若者たち、子どもたちのそばに寄り添っているはずの学校現場の大人たちも真摯に若者たち、子どもたちの声に耳を傾けていないのではと思えてなりません。
 では、岩室は何故、こうやっていろんなSNSに首を突っ込むようになったのか。これは、インターネットの専門家の友人が「若者を知るためにはスマホを持たないと話になりませんよ」と、スマホが出た初期の頃に教えてくれたからです。やはり持つべきは仲間であり、その仲間との対話ですね。感謝です。