紳也特急 24号

〜今月のテーマ『結局、やっぱり、コンドーム』〜

●『民意とは、改革とは』
○『コンドームを着ける男』
●『コンドームを着けない男』
○『コンドームを着けさす女』
●『若者受け間違いなし?』
○『若い女性はセックスがいや?』
●『新しい商品開発』

〜PR〜
○『AIDS文化フォーラム in 横浜』
●『人はそもそも不潔なもの』

◆CAIより今月のコラム
「CAI的AIDS文化フォーラム in 横浜への取り組み」
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●『民意とは、改革とは』
 参議院議員選挙で自民党が圧勝しました。それを受けての各党党首のコメントで一番印象深かったのが自由党の小沢一郎さんでした。いろいろ言い訳をする人が多い中、唯一「国民の選択」を素直に認めたコメントでした。今回の選挙は投票率も決して高くなく、棄権した人が多かったことについて「国民の義務」、等々、いろんな意見があります。しかし、投票しなかった人はもしかしたら選挙結果を読んで投票しなかったのかもしれません。改革を訴えた小泉首相に対して「中味が見えない」、「痛みを伴う」とクレームをつけた各党が結局敗北し、国民は小泉さん流の改革を見守る?容認する?積極的に応援する?(どれなのでしょうか)ということになりました。民意は「小泉さんの思い通りにいくとは思わないが、とりあえずやらしてみたら」という選択をしました。
 個人的にも改革を求めたい分野が多々あります。エイズ対策における行政の中の他人事意識。増える性感染症に無頓着な大人たち。相変わらずコンドーム教育を拒む教育委員会。と、文句を言い始めるといろいろあるのですが、もしかしたらそのような状況自体が民意を反映しているのかもしれないとも思った方がいいのでしょうか。1994年に国際エイズ会議が開催され、その頃から「コンドームの達人」としてコンドームを生活習慣化することに尽力してきたつもりです。しかし、よく考えるといろんな反発は受けつつも、大きな抵抗勢力につぶされることなく、日々、少しずつですが理解者が増えていくのを実感できています。最近、マスコミがエイズを取り上げないという前に、マスコミが取り上げたくなるようなこと(新しい本やパンフレットを出す、等)をすればいいということも学ばせてもらいました。最後に紹介します新刊本が出たことでマスコミも少しは取り上げてくれました。もちろん抵抗勢力がないわけではありませんが、小泉さん同様、出すぎた杭は打ちにくいのでしょう。コンドーム教育における改革は少しずつ進んでおり、少しずつというのが民意なのかもしれません(ちょっと弱気)。

 そこで今回はコンドームの達人が「結局、やっぱり、コンドーム」を考えます。

結局、やっぱり、コンドーム

○『コンドームを着ける男』
 今でもコンドームをつけない人が後を絶たず、望まない妊娠、性感染症、そしてHIV感染が相変わらず増えています。確かに理屈ではコンドームがHIV感染予防、望まない妊娠の回避、性感染症予防に有効です。コンドームを着ける男の特徴は、物事を論理的に考えられる、理屈をつけて物事を判断し行動する習慣が身に着いている、彼女が妊娠してしまったらやばい、本当は彼女がいいと決めたわけではないから変に妊娠なぞされたら別れられない、俺とするくらいだからこいつは病気持ちかもしれないので結構危ない、と状況や先を読める、等です。もちろん「セックスするなら着けるのが当たり前」と生活習慣化されている人もいます。自分が今高校生であればコンドームを着けるでしょう。それは「出来たらヤバイ」、「するのが当たり前」という思いからだと思います。

●『コンドームを着けない男』
 先日、免許の書き換えをしてきました。悔しいことに今回はゴールドカードではなかったのです。ゴールドカードだった5年間の間にスピード違反(東名でのろのろ運転を追い越した際に18キロオーバー)を1回したため次回の更新は3年後になりました。その悔しい思いを話していたら免許更新時の面白いエピソードを聞きました。優良ドライバーの講習場に間違って免停の若者が入ってきたため係りの人に「ここは違反なしの人対象です」と言われ「スゲー、本当かよ、尊敬するよ。違反したことがないって信じランネー」と言いながら出て行ったそうです。物事をあまり論理的に考えず直感的に行動する人(誤解のないように否定的に捕らえているわけではありません)、あるいは直感的に先が読める人は結果で物事を判断するのかもしれません。中には結果自体をあまり気にしないという人もいるようです。今回、選挙に行った人は、行かなかった場合に自分が望んでいる結果と異なる結果が出た時に自分の1票が投じられていないことを責めるでしょう。一方であまり深く考えずに、何となく選挙に行かなかった人は、行っても行かなくても結果は変わらない、行かなくても結果はこんなもんだ、選挙ってあったの、と思っていないでしょうか。
(これも民意!)
 コンドームをつけずにセックスをしても多くの場合は何もおこりません。さらにHIV感染の場合は感染した性行為から検査を受けるまでの期間があまりにも長く、何度コンドームなしでセックスをしていても感染リスクを実感できるようになるまでに相当長い年月がかかります。結局、コンドームを着けない人は何となく着けていないだけで、その重要性を実感できれば(ここが難しいのですが)すぐにでも着けるようになるのではないでしょうか。実際に「するなら着けようコンドーム」ということをくり返し言うことで「結局、コンドームを着けろってことだな」という意識になってもらうこと、コンドームを生活習慣化することが大事ですが・・・・・・・・。めげずに頑張りましょう。

○『コンドームを着けさす女』
 では、女性はどうでしょうか。コンドームを使おうと思っても、使って欲しいと思っても「使って」の一言が言えない。「理屈はわかるけど、どうすれば使ってもらえるの」という声が聞こえてきます。その時に「使ってと言えばいい」と言っても「言えないから聞いてるの」と反論されます。そこで私からの提案が次のようなメッセージ入りコンドームです。昨年からコンドームケースに

 ●レッドーカード:今日は×No!
 ●イエローカード:愛しているならつけて

というシールをサッカーのJリーグ人気にあやかってつけて講演会で使ってみました。セックスをしたくなかったらレッドカードを出す。コンドームをつけてくれない男にはイエローカード。高校生、特に女子に受けたので拙著:パンフレット「思春期の生と性・わたしたちのエイズ」の25ページに紹介しました。これもまた結構評判がよく、実際に作ったと言う話もいただきました。今回のAIDS文化フォーラム in 横浜にあわせてオカモトの協力でメッセージ入りコンドームパッケージ(合計6,000個)を作ってもらいました。オカモトさん、感謝です。

●『若者受け間違いなし?』
 早速このパッケージを持って某短大の1年生(600人)を対象に講演をしてきました。全員に配るのでは彼らの反応がわからないので、メッセージ入りコンドームを自由にお持ち帰りくださいと置いたところ、もって帰らない人がいないくらいの人気で、どちらのコンドームもあっという間に数が減っていきました。大学の先生達は目を白黒させながら「私達教員がいても女子学生は平気で持って帰るのにはびっくりした」という時代錯誤の感想を話してくれましたが、さてどちらのメッセージが人気だったと思いますか?

○『若い女性はセックスがいや?』
 私は「愛しているならつけて」(エチケットしてね)の方が人気なのかと思いました。しかし、何と「今日は×No!」(エチケットしてね)の方がなくなっている数が遥かに多かったのです。どうしてでしょうか。
 「愛しているなら着けて」という方は、セックスの経験があり(20歳の50%)実際に着けてくれない相手がいる場合(経験者の50%)は切実かもしれません。「今までも着けなかったけど大丈夫」と思っていた人も講演を聴いてやはり着けなくてはと思ったかもしれません。これからするかもと思っている人の場合、相手が着けてくれないということが想像できない可能性がありますので単純計算では会場にいたうちの25%の人がターゲットになります。
 「今日は×No!」が人気だったのはセックスをしている人も、していない人も、すなわち多くの場合「本当はセックスしたくない」と思っているのかもしれません。ただ、「No!」と言えずにセックスをしているだけ? でもセックスをしたくない人が「今日は×No!」ケース入りコンドームを渡すと、「次回はOk」と勘違いされる・・・・・・? この点に関しては再考の余地ありですね。「愛しているなら着けて」が重いという意見も。「エチケットしてね」だけでもいい?アイディア募集します。

●『新しい商品開発潔』
 今回メッセージ入りコンドームサンプルを配ることでいろんなことが見えてきました。コンドームが市民権を得て恥ずかしい物ではなくなっているということ、コンドームに対するニーズが非常に高いこと、商品に書かれたメッセージが自分の言葉であって欲しいという希望があること、若い女性が決してセックスに対して積極的ではない可能性があるということ、等々です。結局、「するなら着けようコンドーム」なのですが、それを浸透させるためにはもう少し若者が使いたくなるようなグッズを開発する必要がありそうですね。オカモトさん、商品化しませんか?

メッセージ入りコンドーム希望の方は返信用封筒に送付先を書いて80円切手を貼って下記まで送ってください。2個(1個ずつ)入れて返送します。
〒243−0004
 厚木市水引2‐3‐1
  神奈川県厚木保健所
  保健予防課
  岩室紳也

PR:その1

○『AIDS文化フォーラム in 横浜』
 8月3日(金曜日)〜5日(日曜日)に2001AIDS文化フォーラム in 横浜が開催されます。
http://www.yokohamaymca.org/AIDS/
 1994年に横浜で国際エイズ会議が開催されたのを受け、市民による、市民のためのフォーラムとして同時開催されたのをきっかけに始まり、今年で8回目になります。当初はボランティア団体、医療関係者、教育関係者がセッションを持ち、HIV/AIDSについての理解を訴えていましたが、最近のフォーラムはHIVに感染している当事者自身のセッションも多くなりました。今年の特徴としてはエイズが免疫機能障害と認定されていることについて、同じ「障害」という観点から社会における様々な「バリア」を感じている方と一緒に考えるセッション「バリアを考える」が開催されます。薬害エイズでHIVに感染した桜屋伝衛門氏とパラリンピック金メダリストの成田真由美さんのトークです。皆さんも口先では偏見や差別をなくしましょうと言いながら実際には自分の周りに障害を持った人に対して多くのバリアを作っていませんか。ぜひ一緒にバリアについて考えてみてください。

PR:その2
新刊紹介
 「LOVE・ラブ・えっち」―知ってるようで知らない安全な“Hのこと”オシエマス−(早乙女智子・岩室紳也著)を保健同人社から出しました。値段は1,000円+税ですが中味は結構面白いと思います。ターゲットは中高生ですが、大人にもちょっと参考になるようなまじめな話が詰まっています。女の子編と男の子編に別れており、ぜひ若い世代に読んで悩みを解消してもらいたいと思っています。
 本屋で注文できますが、インターネットでも買えます。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/
http://www.amazon.co.jp/
 いずれも「岩室紳也」で検索していただけますと出ています。

◆CAI編集者より今月のコラム

「CAI的AIDS文化フォーラム in 横浜への取り組み」

 今年の夏は周知の通り暑い。というより熱い。東京の7月の平均気温はフィリピンのマニラを上回ったそうです。自分達の団体を褒める訳ではないけれども、CAIは今年は熱い!珍しく(笑)。
 新世紀を迎えたAIDS文化フォーラムでCAIは大学生チーム、社会人チームに編成し基本的に大学生には私からあれこれ言うのをやめにして、勝手に自分達で議論し講演をしてもらう事になりました。8/4(土)13:00〜15:00 会場405「エイズから見た日本の社会と文化 -エイズ裁判を通して- 」へ是非、足を運んで頂きたく思います。題名は硬いが!?柔軟な脳を持つ大学生の自由な発想や意見に私も期待しています。また、参加される方は是非とも意見や感想を述べて頂けたらと思います。
 今回社会人チームは私や目黒が実行委員の一員にもなった事もあり、社会で学んだスキルを活用し8/4(土)16:00〜18:00 ホール「バリアについて考える」(企画協力CAI)でブロードバンド中継を行います。暑い横浜に行かなくても自宅のPCで『アイスコーヒーを飲みながら』講演に参加できます。また、チャット機能を利用し質問もできます。

場所的なバリアを取り外しましたのでこの機会に是非ブロードバンド体験を。

詳しくは当日(8/4) http://www.i-aids.org/
を御覧下さい。PASS WORD等を公開致します。

                     渡部享宏(わたなべたかひろ)