紳也特急 26号

〜今月のテーマ『包茎あれこれ』〜

●『松村課長有罪!』
○『文部科学省に呼ばれた!』
●『読者からのお便り』
○『NHKは無責任だ!』
●『包茎は遺伝するんですか?』
○『外国から包皮翻転指導に来たA君』

◆CAIより今月のコラム
「大好きな私の友達へ」
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●『松村課長有罪!』
 薬害エイズで厚生省の松村課長が有罪になりました。「官僚は個人責任を問われない」という官僚の常識が崩れ去りました。私も「行政マン」ですが、行政は国民の健康に対して責任があり、責任を果たさないと裁かれることを示した点で画期的な判決だと思います。今度、セックスでHIVに感染した人が「HIVは不特定多数とのセックスで感染する」といった誤った情報を流し続けた厚生労働省、文部科学省を訴えたら、その当時の官僚は有罪になるのでしょうか。でも、そのような情報は未だに数多く流れています。ところが・・・・

○『文部科学省に呼ばれた!』
 この度、どういう風の吹き回しか、この岩室が文部科学省関連の仕事をすることになってしまいました。性教育やエイズ関係の仕事をしてきた中で、常に「寝た子を起こすな」という姿勢の旧文部省や各地の教育委員会に煙たがられてきた私が、今度、高校の教師向けの性感染症予防に関するパンフレット作成に携わることになりました。私を呼んでくださったのが母子愛育会の平山宗宏先生(東京大学名誉教授)だったので、これは非常にありがたいことと第一回目の委員会から積極的に持論を主張させていただきました。もちろん若手ということで宿題もいただきましたが頑張って高校でも性感染症・エイズ予防に役に立てればと思っています。不特定多数神話(?)も崩壊させるように努力します。

●『読者からのお便り』

 「私の○年間は正しかったのだ!」と先生に握手を求めたい気分でした。
○人目にして初めて男児を出生しました。 保健婦でありながら小児のオチンチンには今ひとつ苦手としていたので「このチャンスを逃がす手はない!」と出生2日目、母子同室になったとたんにエイッ!と皮を剥いてみました。少し出血はしたもののホンノすこし尿道口周辺までしか降りません。その日からです。オチンチンとの戦いが始まったのは・・・ 。一日も欠かさず(初めはオムツを替える度?)皮を引っ張り続けました。保健婦仲間に話しても「そこまでしなくてもいいのでは?」とか小児科医も曖昧にしか答えてくれません。夫には変態扱いされるし・・・ しかし、年数を追うごとに着実に亀頭部分の露出が広がりました。トイレトレーニングと同時に本人にも皮から亀頭部分を出して排尿することを教え、お風呂でもしっかり出して洗うように教えました。そんなころ「生まれたときから剥き始めよう」って説明された先生に後押しされ今まで以上熱心に反転する日が続きました。最近、少しめくれた皮を思いっきり引っ張ってみました。亀頭部分はすべて露出したのですが赤剥けた状態になり2・3日彼に痛い思いをさせてしまいました。受診もせず清潔を保つことでなんとか落ち着いたのですがまだ、亀頭のしたあたりから皮がピッタリ引っ付いています。どんどん剥いてしまいたい気もするのですが彼は痛いのはイヤと言うし、夜中に痛みのため何度も泣かれるのも親が辛いです。(睡眠を妨げられる・・・冷たい親?!)で・・・今後ですが・・今までどおり反転を着実に続けて行けばいつ頃すっきり剥けるのでしょうか?中途半端に剥けた状態で陰茎が成長するとカントン状態にはならないのでしょうか? どんな対応がベストでしょうか?

岩室:癒着部を剥がす時、少し痛みを伴います。1週間で1ミリを目安に少しずつむいてあげてください。エイッとやればすぐにでもむけるでしょうが、最終目標は本人が自らむいて排尿と清潔確保ができるようにすることです。むいた後、戻しておけばカントンはしません。本人に少しずつむいて「かっこいいちんちんにしようね」と納得させながら、痛みも喜びも共有するつもりで対応してあげてください。

読者の方の応援を得て今回のテーマを「包茎あれこれ」としました。

○『NHKは無責任だ!』
 9月2日偶然新聞のテレビ欄を見ていたら「おちんちん」という文字が目に飛び込んできました。ビデオにとって見てみると怒り沸騰! 大学病院の小児科の先生が解説していましたが、疑問に感じることが多く「NHKは無責任だ!」と思ったほどでした。偶然その番組を見ていた同僚も「あれはおかしい」と言っていました。
 先生曰く「数年前まではむいて洗うのが主流でしたが、無理にむくと出血したり、おしっこのときに痛くなったりすることがあるので、最近はむかないほうがいいという考え方になっています」。 逆じゃないの?????? むいて洗う(私の主張)が主流になったことはないと思います。
 「恥垢菌」についての解説もありました。恥垢菌なるものがあるというのは私の勉強不足でしたが私の周りの泌尿器科医で知っている人はいませんでした。確かに恥垢菌という菌(学名:Mycobacterium smegmatis)は存在します。ただ、この菌は人間に悪さをすることはなく、むろんおちんちんを腫らす亀頭包皮炎の原因でもありません。いわゆる常在菌です。そして最後には「泌尿器科の先生に相談」と責任逃れ。翌週、番組を見た患者のお母さんが「どっちが正しいのですか」と聞かれてしまいました。その後の会話は想像におまかせします。

●『包茎は遺伝するんですか?』
 3ヶ月のお子さんの包皮翻転指導で通院しているお母さんとの会話です。
母親:先生、包茎って遺伝するのですか?
岩室:(ご主人が包茎なのでそのような質問になったかと思い、確認のため)どうしてそう思うのですか?
母親:お姑さんに「私は息子を2人生んだけど、うちの家系には包茎はいなかった。あんたの家系が悪いのではないか」と言われたんです(と、怒った様子)。
岩室:(なんだ旦那ではなかったのかと思いつつ)そもそも子供はみんな生まれた時には包茎なので遺伝するとかしないとかという方がおかしいと思いますよ。
母親:そうですよね(と、ほっとした様子)。
岩室:そんなことでもめないでくださいね。ちゃんとむけるようになりますから。

 嫁姑の葛藤の要因は様々ですが、「包茎」で「家系」が持ち出されてもめるとは思ってもみないことでした。

○『外国から包皮翻転指導に来たA君』
 外国在住の日本人A君は何度も亀頭包皮炎をくり返し、包皮口が狭く、おしっこをするのも苦労し時間がかかる状態になってしまい、現地の医者に「手術するしかないですね」と言われました。しかし、ご両親は何とか手術以外の方法で対処できないかと思いインターネットを検索したところ岩室の「手術なしでむける」というメッセージに到達されました。夏休みを利用して帰国した彼は早速私の外来を受診しました。外国から来たというので驚きましたが、それ以上にびっくりしたのは彼のペニスの状態でした。最初に診察した時、専門医である私でさえもおしっこの出口、外尿道口がわからなかったのです。
岩室:おしっこする時ちゃんと出る?
A君:なかなかでなくて力を入れないとだめです。
岩室:おしっこが出る時、先っぽが膨らまない?
A君:膨らむよ。
岩室:先っぽが膨らむのはいつから?
A君:わかんないけど大分前からかな。
 おしっこをする時に包皮口が狭いと、尿は尿道を通って亀頭部の先にある外尿道口から出るのですが、包皮口から出ることができずに包皮と亀頭部の間の隙間に溜まります。それを外から見るとペニスの先が風船を膨らませたようになり、その状態を「バルーニング(ballooning)」と呼んでいます。強くいきまないと尿が出ない状態を長く放置しておくと、膀胱に溜まった尿が再び腎臓に逆流する膀胱尿管逆流症という病気になります。これが進むと尿毒症になってしまうことがあります。包茎で尿毒症って「うっそー」という感じでしょうが
実際にはそのようになる人もいます。
 ということで、その日から紳也特急15号で紹介した風船による拡張法を実施しました。もっとも彼の包皮は一筋縄では広がらないほど炎症を繰り返しており、初日は包皮口が2ミリ程度に広げられただけでした。1週間に1回通院を続け、少しずつ包皮口を広げていった結果、6回目の受診時にクリンっと亀頭部が全貌を現しました。あとは毎日むいて洗っていれば包皮口は亀頭部が容易に通るサイズになるでしょう。ご両親も「正直、ここまでむけるようになるとは思っていませんでした」と感想を述べられていましたが、一番喜んだのはもちろん患者本人でした。

追伸:狂牛病で世の中が大騒ぎをしています。でも、そもそも草食動物だった牛が気の毒だと思いませんか。仲間の肉や骨を食べさせられ、挙句の果ては悪者扱いにされて焼却処分。これってどこか変ですよね。

◆CAI編集者より今月のコラム

「大好きな私の友達へ」
(この場を借りて)

一緒に笑った
一緒に泣いた
一緒にけんかした
一緒に悩んだ
一緒に喜んだ
一緒に苦しんだ
一緒に感動した‥

いっぱい一緒に
いろんな事をしてきた。
時にはもう嫌になって、
バラバラになったりした。
でも離れられなかった。
やっぱり友達だから…。
大好きな友達だから…。

あなたに出会えた自分は、
本当に世界一の幸せ者だ。
これからいろいろあると思うけど
仲良くして下さい!
                  ( H.T )