紳也特急 38号

〜今月のテーマ『むくべきかむかざるべきか』〜

●『ご報告「むけました!」』
○『ペニスの文化史』
●『ばらばらな専門医の考え方』
○『何を信じますか?』
●『住民主体が当たり前』
○『むくべきかむかざるべきか』

◆CAIより今月のコラム
「しょくよくの秋、足利のまき」

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●『ご報告「むけました!」』
 紳也特急Vol.26『包茎あれこれ』で息子の包茎について掲載、アドバイスしていただいたものです。
> 1週間で1ミリを目安に少しずつむいてあげて
> ください。エイッとやればすぐにでもむけるでしょうが、
> 最終目標は本人が自らむいて
> 排尿と清潔確保ができるようにすることです。
 このメールから新たに息子とともにオチンチンに向き合いました。二日に1度「オチンチンの日」と決め「かっこいいちんちんにしようね」とお風呂上りに少しずつむいてみました。時々、ちょっとむき過ぎたかな・・・と思うときは「中2日、3日」とあけて今年の3月頃まで続けました。しかし、3月頃からどうやってもむけなくなってしまいました。まだ、癒着部分は残っているのに・・・。無理に引っ張ると痛みも強く息子も納得しないので一時、中断状態となりました。もちろん、排尿や入浴時は息子自身でしっかり皮をむいていることは確認できていたのでときどき観察しながら今日まで放置していました。今、入浴後の息子に「ちゃんとむいて洗った?」と聞くと「洗ったよ!」と見せにきました。せっかくなので良くみると「むけちゃってる??」あと一息で中断していたオチンチンがしっかりむけてるではありませんか!息子曰く「最近、ときどきチクチク痛かった」とのこと前にもたまにチクチクしたこともあるようで・・・すぐ痛みも治まるから言わなかったようです。「かっこいいちんちんの出来上がりだね!」と言うと、息子はとても喜んでいました。出生から7年半(約2,730日)かかっての快挙です!明日はケーキでも買ってお祝いしようかと思っています!

 岩室です。「むけましておめでとうございます」年賀状の巻頭言ができましたね。ケーキは目一杯美味しいのを買ってあげてください。「感動」を共有することは大切ですよね。

 読者からの便りほど励まされるものはありません。他にも紹介したいお便りをいただいているのですが、この1ヶ月は包茎について考えさせられることが続いたので今回のテーマは「むくべきかむかざるべきか」とさせていただきました。

○『ペニスの文化史』
 マルク・ボナール(精神科医)、ミシェル・シューマン(泌尿器科医)著、藤田真利子訳「ペニスの文化史」(作品社)という本をインターネットで見つけました。包茎について一応専門家気取りの私としては読まないわけにはいかず、早速インターネットで申し込みました。第4章「包皮の問題」1「包茎」を読み進むと「子どもの場合は、問題は主に衛生的なものである。排尿するのに不便がある。親や医師は、子どもに亀頭を出すようにと教える。通常は、これでうまくいくことが多い。しかし、包皮が狭すぎて、手術するしか方法のない場合もある。」・・・中略・・・(訳注)この問題については、文化的、あるいは肉体的条件の違いにともなって、その考え方や対処の仕方が変わるようである。日本では、簡単に亀頭を出せる状態のものを「仮性包茎」、そうでないものを「真性包茎」(嵌頓包茎など)と言い、「仮性包茎」の場合、とくに合併症がなければ治療の必要はないと言われる。また防止のために「小さな時から必ず亀頭を出す習慣を身につける」といった指導は行っていない。
 おいおい、厚木病院では行っているが、包皮翻転指導はフランス流のやり方だったのですね。今度からフランス流おちんちん体操と呼び方を改めましょうか(笑)。

●『ばらばらな専門医の考え方』
 先の日本小児泌尿器科学会総会で興味深い発表がありましたので紹介します(山崎雄一郎:日本の小児の包茎は治療の対象か?第10回日本小児泌尿器科学会総会アンケート集計、日小泌尿会誌、11、84、2002)。導入部の設問で小児包茎の相談を受けるという回答を得た医師96名(泌尿器科66名、小児外科21名
小児科9名)が対象。小児の包茎のチェックが必要60名(63%)、不要36名(37%)。必要があると解答した場合、時期としては3歳時31名が最多。健常な小児包茎に対して包皮翻転指導を行うべき46名(48%)、行う必要はない46名(48%)。健常な小児包茎に対する手術療法については行うべき4名、翻転が困難な時行うが39名、両者合計43名(47%)、手術は不要47名(52%)。実際に包茎治療を行う場合の理由は包皮口狭小50名(53%)、家族の希望27名(28%)、亀頭包皮炎の既往15名(16%)、尿路感染の予防3名(3%)。包茎に対する治療を行う場合、もっともよく行われる治療方法は包皮翻転指導28名(30%)、狭小部軟膏塗布による翻転指導27名(29%)。外科的治療としては環状切除術18名(20%)、環状切除術以外の手術19名(21%)。思春期以降の男子に対する公的教育に関しては必要62名(65%)、不要29名(31%)。

○『何を信じますか?』
 日本小児泌尿器科学会に出てくる医師は基本的にお金儲けとは縁がない人たちで(ごめんなさい)、上記の回答はご自身の経験と良心から出されたものだと思います。にもかかわらずこんなに意見が分かれています。他の疾患では治療方針にそれほど大きな差がないのに包茎について医師の姿勢が大きく異なるのは、包茎では(まず)誰も死なない、手術が簡単、継続的な経過観察ができない、包茎でもそうでなくても実際には生活上の困り感が少ない、何より医師も自分の経験を中心に判断してしまう、等です。そのため学会でもあまり真剣に議論もされませんし、上記のようなアンケート結果が出ても、なかなか方針を統一する方向で真剣な議論が起こりません。しかし、アンケートで手術不要が半数以上で、もっともよく行われる治療法が包皮翻転指導だったというのはうれしい限りでした。

●『住民主体が当たり前』
 では社会のコンセンサスを作っていくのは誰なのでしょう。もちろん医学的なことについて言えば専門家である医師と、そうではない一般の人との情報や知識の差は歴然たるものがあります。一般人が包茎をどうすべきか迷った時には他の人がどうだったかという情報や知識もなく、自分で対処する技術もありません。当然のことながら医師に、医療機関に相談することになるでしょう。しかし、包茎について納得できる説明をしてくれる医師はどれだけいるのでしょうか。医師の中でも対処方法について様々な意見があり、手術をする医師から、手術不要と言い切る医師までいます。実はこの両極端の考え方を持った医師がいるという情報こそが重要で、そのことをきちんと伝えていくことが求められています。さらにそのような情報を元に、本当は一般住民の方が包茎をどう扱って欲しいかをもっとオープンにきちんと意見を出し合うべきだと思っています。「包茎はどうすればOKなの?」と。

○お兄ちゃんは3歳でやったけど生まれてすぐやった弟の方が本人にとっても楽だったよ。
○亀頭包皮炎ですごく痛い思いをさせた兄の思いを弟にはさせたくないと思ってむきました。
○3歳で始めたのですが痛がるのを無理にするのもかわいそうと思い結局挫折しました。
○一気にむくのはやめて欲しい。
○むくのって当たり前じゃないの。みんなやってるよ。
○ウソ。私の周りでは誰もむいていないよ。

 このようにいろんな声があがれば医師の考え方も変わると思います。とかく日本人は「お医者さん、専門家の方にお任せします」という風潮が強く、自ら考え対処法を主張するということが苦手のようですが、これからは状況が変わるでしょう。余談ですが、先日わがマンションの排水が溢れることが問題となり、業者に対策について説明を求めたのですが「素人に説明してもわかるはずがない」という態度が見え見えでした。実際に対策の説明を聞くと素人の私でもこのような方法では水が溢れるのを防ぎきれないと思い、「こうしてもらえませんか」と具体的な提案をしたら「それはいい考えですね」と言われ呆れかえってしまいました。

○『むくべきかむかざるべきか』
 これからはどんなことについても情報開示、インフォームドコンセントが当たり前になるでしょう。厚木病院で新生児に対して包皮翻転指導を行ってきましたが、当初から不思議と四分の一の方は包皮翻転が完了するまで通院していただけません。お母さんはやろうと思っていてもおじいちゃん、おばあちゃん、さらにはご主人が「かわいそうだからするな」と言っているのかと思っていました。実際にそのような例があるかもしれませんが、実は包皮翻転指導で一番理解をしていただかなければならないお母さんが十分理解できていないのではないかと反省しています。包皮翻転指導の必要性を理解し、納得し、技術的にも習得した上で毎日行わないといけない。これって結構大変なことなんですね。「むくべきかむかざるべきか」について医師でさえも判断が分かれるのに四分の一の母親が脱落しても当然ですね。
 それでもおちんちん外来はどんどん口コミで認知度が高まっているようです。医療関係者の説明よりも「むけるといいよ」というお母さん同士、育児仲間の一言が大きな輪になっているようなので、これからもがんばってむくお手伝いをするぞ!!!

◆CAIより今月のコラム

「しょくよくの秋、足利のまき」

 みなさんココファームって御存じですか?栃木県は足利市にあるワインメーカーです。1950年代にはじまった、こころみ学園という知的障害者の方の学校が母体となっていて、数はすくないですが、おいしいワインをつくり続けています。ここで毎年11月の第3土日曜に収穫祭が開かれています。

 これがとっても楽しいんです!若者もおじさんおばさんも、家族連れもたくさん。みんなでぶどう畑の丘陵にゴザひいて、ワイン片手に(こどもはぶどうジュースね)しゃべったり、生演奏聞いたりします。

 ぼくはボランティアおつまみ販売要員として、3回ほど参加しているのですが、なんか昔のお祭りってこんな感じだったのかも。

 畑や山がメインの背景で、車とかはなくて、季節のおとずれと収穫を、祝う祭り。
 秋の行楽にいかがでしょーか?

「ココ・ファーム・ワイナリー」