紳也特急 39号

〜今月のテーマ『AVを教える性教育』〜

●『何事も商売優先』
○『AVではコンドームが使われていた!!!!!』
●『モザイクの役割』
○『作り物の精液』
●『AVをどう教えるか』
○『コンドームをつけない基本?』
●『AVは必要悪???』

◆CAIより今月のコラム
「君ノ思イ」

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■読者からの便り

 紳也特急Vol.37に出てくる「違和感、抵抗感のない膣外射精」という部分ですが、ぼくが高校(今43歳です)の時は、膣外射精は避妊の一つの手段というのが一般的でした。当時、高校生はコンドームを薬局で買う勇気もなかったので、避妊の方法がそれしかなかったのです。「その一滴が・・・」と岩室先生や、保健師の方がおっしゃっているように、射精の時だけ抜いても妊娠する可能性はあるということは最近知りました。(ちなみにうちでは今でも家族計画は膣外射精です)
 で、メルマガには「膣外射精」と、ひとくくりで表現されていましたけど、AVのように顔射の場合と、うちでやっている腹射の場合とでは、女性の反応は天と地の差があるように思います。うちの妻は顔射に対してはものすごい抵抗感を持っていますし、ぼくも顔射は女性に対する凌辱的に思えて、とてもできません。でも腹射の場合はお互いに抵抗感も違和感もありません。もし顔射に対して今の若い女性たちが、違和感も抵抗感も持っていないとしたら、AVの影響は相当なものがあるように思えます。「凌辱」という言葉はもはや死語になっている感さえあります。男性が女性を凌辱しているAVを、女性自身が観ることで、いつの間にか女性の中に自尊心とか、女性であることの尊厳といったものが失われていくのではないかという 気がします。(後略)

■女子高校生の質問

 高校での講演会が終わって帰ろうと玄関で靴を履いていたら女子高生5人組が駆け寄ってきました。
生徒A:あれ(精液)を飲むと肌がきれいになるって本当ですか。
生徒B:(精液を飲むと)太るって本当ですか。
生徒C:男は(フェラチオ)されたいんですよね、先生はどうですか?。
岩室:(フェラチオなんてやめておけ。どうせアダルトビデオ(AV)に毒された君らのパートナーが求めていることなんだからという言葉を飲み込んで、慌てたふりもせず)そう質問するってことは君たちもしているんだろうから正直に答えるけど、肌がきれいになるのはウソ。精液にもカロリーがあるから太るともいえる。
生徒A:えっ、ウソ。
岩室:それに、フェラチオで病気になることもあるんだから
生徒全員:ウソ!!!!!
岩室:フェラチオで一番多いのはクラミジアだよ。
生徒全員:エッ・・・・・・・・・・・
岩室:自分がしたいのかしたくないかを決めな。
生徒C:でも先生だってしてもらいたいでしょ。
岩室:男は確かにフェラチオをされたいという願望を持っている人もいるし、
自分もそうかな。
生徒全員顔を見合わせ:やっぱり。
 あっけらかんとフェラチオの話をする生徒。むしろ5人もの生徒さんの勢いに圧倒され、戸惑っているのは性教育をする側の私という構図は自分ながらおかしかったですね。それと生徒はフェラチオの話を聞きたがっていたのに、そのことに触れなかった自分を反省していました。
 高校生に圧倒された翌日、カリスマAV(アダルトビデオ)男優の加藤鷹さんの話を聞く機会がありました。彼曰く、所詮AVは商売であって現実ではない。しかし、若い連中はそれを信じてしまう。ちゃんとAVは現実の世界とは違うということをわかって楽しめるように性教育で教えなければいけない、と。AVが氾濫する時代に、いま、AVの何を、どう伝えるべきかを改めて考えさせられました。そこで今回のテーマは「AVを教える性教育」としました。

『AVを教える性教育』

●『何事も商売優先』
 紳也特急37号で『私はどおせならブラックコンドームをつけていることを鼓舞する男と、「コンドームを着ける男はすてき」と女性が思っているというイメージ作りをしてもらえないかと思ったのですが、AV監督様、いかがでしょうか。無理かな?』というのを最後に書きました。ところがこれって甘い発想、自分のことを棚にあげて他人に性教育をしてくださいと言っているだけだと気づきました。AVを敵視するだけで何ら解決になりません。
 所詮AVは商売優先の作り物、虚構の世界です。それをきちんと伝えないからAVを信じてまともなセックスができない、犯罪(レイプ、等)に走ったりする人間が出てくるわけです。時代劇では殺戮が繰り返されても実際に時代劇のようなことをする人がいないのはあれが虚構の世界であることを知って楽しんでいるからで、AVも時代劇と同じは所詮娯楽の一つで、そのことを否定するのはいけないかもしれません。

○『AVではコンドームが使われていた!!!!!』
 しかし、AVについて教えるからには、実際にAVの撮影がどのように行われているかを知らないと話せません。AVではコンドームが装着されている場面(ペニス)は映りませんし、膣外射精で終わる際もコンドームを外している状況は映し出されません。だからAVではコンドームなしのセックスをしていると考えられています。というか私もそう思っていました。しかし、現場では使っているそうで、それも考えてみれば当たり前のことですよね。

●『モザイクの役割』
 AVにつきもののあのモザイクが何のためにあるのでしょうか。モザイクの向こう側に何があるのかを連想させ、ドキドキする想像力をかき立てるためで、ペニスや外陰部を隠すためではなかったのです(もちろん映倫の枠を守るためという大原則はありますが)。さらにコンドームを装着していることやペニスを挿入していないこともあるということを隠すためだったのですね。別にコンドームをしていてもしていなくても見る側はいいのかもしれませんが、コンドームをしているとなるとどうやって外して顔面射精に持っていくかというところのテクニックも要求されますし、実際に挿入していないとなればこれまた「サギだ」と騒ぐ客が出るでしょう。

○『作り物の精液』
 膣外射精、顔面射精の精液についても面白い話がありました。精液の本物もあるようですが、代替品としてコンデンスミルクとローションを混ぜ合わせたものを使っているそうです。AVで大事なことは見る側がお金を払ってでも見ようとするだけのものをつくることで、人間の生のセックスを撮影しているのでは、毎回思い通りの場面が撮れるわけがなくいろんな工夫をするんですね。この話を聞いて、私は「やっぱり」としか思わないのですが、中学生、高校生が見ると信じてしまうのもまた無理はないと思います。

●『AVをどう教えるか』
 「AVは作り物」というだけで果たして若者は納得し、AVを見習わないセックスができるでしょうか。私はそうは思いません。むしろAVの中味について具体的に、もっと言葉で、(敢えて映像を見せる必要はないと思いますし、見たくない人も多いでしょう)内容のウソと実世界とのギャップを教えた方がいいのではないでしょうか。さらに重要なのは、男性は面白がって見ていることが多いけど、女性の意識は男性と異なって不快感、嫌悪感、等のいたたまれない気持ちを持つこともきちんと伝えることです。

○『コンドームをつけない基本?』
 先日クラミジアに感染した男子高校生が外来を受診した時の会話です。
岩室:クラミジアだよ。どうしてコンドームを着けなかったんだよね。
患者:オレの場合コンドームを着けないのが基本です。
岩室:?????? セックスするならコンドームを着けるのが基本だよ。AVだってコンドーム着けてんだよ。ぼかしが入っているのはコンドームを見せないためだって知ってたかい。
患者:・・・・・・やっぱり着けないとダメなんですね。
 「着けないのが基本」とは恐れ入りましたが、「AVの基本」を教えることで「セックスするならコンドームという基本」を少し理解してもらえたようでした。

●『AVは必要悪???』
 AVを正当化するつもりはありません。AVがない世界を実現するように働きかけることも大切なのかもしれません。しかし、自分自身もお金を払って見ている一人で、AVに加担していると言われたらそれまでです。見る男も多いのですが、AVに出る女性もまたいるんですね。AVを排除しようとする代わりに、AVも社会に蔓延する必要悪の一つと考えれば、AVとどう向き合い、AVをきちんと受け止めるための性教育の方法論が見えてくるのではないでしょうか。

◆CAIより今月のコラム

「君ノ思イ」

君ノ思イガ知リタイ
言葉
手話
身振リ
色々ナモノカラ

教エテ
君ハ何ヲ思フ

ソノ瞳
ソノ唇
ソノ声

何ヲ伝エタイノ
君ノ思イガワカレバ
僕ハ世界一幸セ

                          T.H