紳也特急 41号

〜今月のテーマ『寝る子が眠っているおかしな日本』〜

●『あけましておめでとうございます』
○『寝る子が眠っているおかしな日本』
●『寝た子と寝ている子の違い』
○『セックスは握手と同じ?』
●『メール相談でカウンセリング』
○『「私」と向き合う』
●『若者も大人の声を待っている』
○『FMエイズ特別番組の宣伝です』

◆CAIより今月のコラム
「和の心」

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●『あけましておめでとうございます』
 2003年元旦、皆様はいかがお過ごしでしょうか。正月早々この「紳也特急」を読んでくださって、本当にありがとうございます。皆さんの声援が私のエネルギーの源です。今年は昨年にも増して応援のほど、よろしくお願い申し上げます。
 さて、私は公務員最後の正月をのんびり野沢温泉で過ごしています。一年前の元旦にHP(紳也’s HP)を公開したところ、多くて月1,000件かなと思っていたアクセス数が予想を上回り情報発信が少しは進んだかと思う一方で、HIVに感染している人の数も先進国の中で唯一右肩上がり。私の外来に来られる人たちも、もう少し情報があれば、もう少しコンドームが普及していればもしかしたら感染が防げたかも、と「たら、れば」とつい思ってしまいます。もう少し徹底したエイズ教育、HIV/AIDSの普及啓発活動をしなければと反省していた時に今勤めている県立病院が厚木市に移管される時期になりました。私が県の職員のまま市立病院で外来をすることができないため、この際県を辞めて外来を続けながらHIV/AIDSの普及啓発、そしてもう一つのライフワークであるヘルスプロモーション、地域保健医療計画の分野に専念しようという決心をしました。本務先はまもなく発表できると思いますが、これからは全国を飛び回るつもりで頑張りたいと思います。皆さん、応援よろしくお願いします。そして仕事をくださいね。公務員の時より暮らしが苦しくなるんです・・・・・。

 ということとは関係ないのですが、前回のテーマ「寝た子を起こそう健やかに」の続きをもう少し深く考えてみたいと思いテーマを「寝る子が眠っているおかしな日本」としました。

○『寝る子が眠っているおかしな日本』

●『寝た子と寝ている子の違い』
 寝正月を楽しんでいる方もいらっしゃるでしょうが、今年は目覚めた子どもをつくる元年にしたいと考えています。先月号の紳也特急で「寝た子を起こそう健やかに」と訴えましたが、寝た子の定義が曖昧でした。一般的には寝た子は性情報に疎い幼い子を想像するでしょうが、実はセックスをしている子が目覚めている、きちんとした性の情報を持っている、寝ていないかといえばそうではありません。実は寝ている=セックスをしている子も性に関する意識は意外と眠っている寝た子でした。

○『セックスは握手と同じ?』
 若い十代半ばの女の子がセックスをする理由に「嫌われるといやだから」という話はよく耳にします。大人、というかセックス経験者なら自分のことに当てはめて好きな人が出来ても自分だったらセックスが怖くてできなかったのに今の若い子達は結構平気なのかな、と勝手な想像をしてしまいます。しかし、「嫌われたくない」ということはいま「好かれている」ということではないようです。「嫌われるといやだから」と言う女の子に「じゃあなたは好きなの」と聞き返してあげてください。「好き」と言ったら「どこがどう好きなの」とさらに突っ込んでください。最近若い子ども達と話をしているとセックスをしているのに、相手に対して特別な感情を持っていないことが少なくないということに気付かされます。嫌われたくないからと言いながら自分自身もそんなに胸キュン、胸が熱くなるような恋をしているのではないんです。セックスをしないと一緒にいてもらえないからセックスをする。実は好きでもない人でも一緒にいてくれる、時にはセックスをしてくれるというだけでセックスをしている女の子が少なくない。病気の人が何となく手を握ってくれる人がいると安心すると同じような気持ちでセックスをしている若い女の子がいます。セックスをコミュニケーションというか触れ合い程度に考えているのかもしれません。

●『メール相談でカウンセリング』
 自分の本当の気持ちに気付いてもらう手段としてHPからのメール相談がもってこいです。性に関する相談は非常にしにくいものですし、相談する側も何をどう表現したら良いのかがわからないものです。若い人の場合、そもそも自分の心の葛藤が何故起こっているのかも上手く表現できないから相談したいのにそのことを上手く伝えられません。メールというのは言葉一つひとつを大切にできます。最初は上手く自分の気持ちが表現できていなくても一つひとつの言葉を聞き返すことで本人が表現できていないことも表現できるようになります。相談者は自分の感情を自らの言葉で言語化していくことで気持ちが整理できていきます。

○『「私」と向き合う』
 相談者達の言葉を断片的に拾ってみると「私はやった後とても死にたい気分でした。今は違う男の子とやる約束をしています。私は一人でいるのが怖くて別れるとすぐ他の人を好きになります。私は寂しいから一緒に居たいという気持ちがあります。私は本当に好きな人は居ません、というかあまり男の子が好きではありません。」
 少しずつ「私」の気持ちに気付いていくことで「私」と向き合い、「私」はどうしたいのかということを自らが感じ取っていくようです。
 若い女の子は決してセックスがしたいのではないんですね。セックスをしているんですがセックスという行為と自分の気持ちが乖離しているという点では寝た子、眠っている子だと思います。セックスをしているという現実を突きつけられると大人はセックスという行為に戸惑いセックスをしているその人と向かい合うことができなくなりがちです。しかし、少しずつカウンセリングマインドで接していくと、若者は自分の気持ちに気付き、目覚め、自分自身で自らの行動を変えていけるようになるのではないかと思っています。

●『若者も大人の声を待っている』
 先日大学生が性についてアンケート調査をしたり、自分達の意見を言ってくれるというイベントに参加しました。率直に語る彼らの姿勢は会場の大人たちを少しビックリさせたようですが、その大学生からは「大人の声を聞きたい」というメッセージが送られてきました。
 『今回は最近の若者の行動を知っていて最近はそんなもんだねぇ〜って感じで理解?ある人が多かったので、今度は、「頭かたいんじゃないの?」と思うような、若者を喝しそうな人もいたらおもしろいかなと思います。終了後に私たちのとこにきて「セックスと結婚が結びつかないってほんとなの?」って聞いてきいた人なんてぴったりだわぁ〜と思ったりして。私たちとは違う年配の人が考えていることも知りたいと思いました。』
 そうなんです。大人は現実を直視しつつももっと若者に自分達の思いをぶつける必要があるのではないでしょうか。大人の声を聞いた結果、若者はこうも言ってくれました。
 『「私たちってセックスを安易に考えてる部分もあるよね」と気づかされました。まさに、寝たコ(◎‐◎)それに気づけたことは大きな収穫だったと思います。』
 今年はこのように一見目覚めているように錯覚されている若者をも視野に入れた普及啓発活動と相談支援ができればと思っています。

 今年もよろしくお願いします。

○『FMエイズ特別番組の宣伝です』
 毎年恒例になった「THINK ABOUT AIDS 2003」が全国のFMネットで1月12日前後に放送されます。DJの栗原治久さんとのトークです。よろしくお願いします。

◆CAIより今月のコラム

「和の心」

 私は三味線を始めてもう二年経つが、これがなかなかおもしろい。音は常に一つに定まらず、天候や温度によっても変化する。少しでも手入れを怠ればすぐにおかしな音を出す。毎日毎日、共に生きているようだ。 音はその日の体調や気分でも変化する。邦楽に、決められたリズムなどない。歌い手やお囃子にも合わて、邦楽のオーケストラを築いてゆく。
 今、三味線に夢中になってしまった魅力の一つは、「自分らしく表現できる」という事なのかもしれない。様々なお稽古に挑戦したが、なかなかしっくりくるモノがなかった。与えられた曲に楽譜はあっても、弾き方は自由だ。三味線と対話しながら、自分らしくあれる時間をもつ。なかなか楽しい趣味だ。2003年は大和撫子として、お正月は着物を着てはじけてみっかな!

                           S.O