紳也特急 51号

〜今月のテーマ『包茎のインフォームドコンセント』〜

●『高校生からの感想メール』
○『30股・・・・・・』
●『こんな性教育もあるのですね』
○『むいて訴えられた???』
●『結果だけを見る過ち』
○『痛い思いをするのは息子?』
●『小児科医がむかない訳?』
○『インフォームドコンセントの難しさ』
●『上手な包茎問答』
○『インフォームドコンセントの目標』

◆CAIより今月のコラム
「最近の小学生」

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●『高校生からの感想メール』
 こんばんわ。今日、先生のエイズ講習会に参加したので、その感想なんかを書きたくてメール書いてます・・・。
 最初、はっきり言って、あんまり期待してなかったんです(ゴメンナサィ)。エイズとかって、最近保健体育でもやってるし、どうせあんなことしかやんないんだろうなぁ〜とか思ってたら、何だかとっても聞きやすく、分かり易い内容で、思わず「へぇ〜」と言ってしまう場面もありました。先生の話は、嘘がなくて、凄く・・・生々しいと言うか、そんな感じでした(日本語下手ですみません)。私達にも、身近な問題なんだなぁと、つくづく実感させられました。私は現在彼氏と言う人は居ませんが(あら悲しい)。やっぱり、友達の中でも、セックスをしたことあるって人が居るんですよ。ちゃんと、コンドーム付けてもらえたのかなぁって、凄く不安になってしまいました…。でも、その子が万が一エイズにかかっていても、日常生活をしていく上では全く感染しないんですよね? 偏見が、取っ払えました!! 今日は本当に勉強になりました。ありがとうございました。

○『30股・・・・・・』
 私は高校生で女の子なのにHが大好きで、一時期、30股くらいかけていたのですが、ゴムをつけてもやぶれてしまったこともあったので、今日、(先生の話を聞いて)あらためて不安になりました。また、大好きな人とやると生なときもあるので、今後きをつけます!

●『こんな性教育もあるのですね』
 先日、知り合いと高2の息子が修学旅行中という話しになり、その方が高校の修学旅行の思い出話をしてくださいました。京都でお寺のお坊さんから話を聞くことを企画し事前に約束をとりつけていたそうですが当日行ってみると、忙しくて対応できないとのこと。困り果て、いくつかお寺をめぐったところ小さいお寺のお坊さんが、突然にもかかわらず快くお話をしてくださったとのこと(2時間もの長い時間)。そのお寺は水子地蔵のお寺で性に関心の強い男子高校生に対して快楽のつけがここにきているんだよ、と話してくださったそうです。「そのころは、SEXのことばかり考えていたけれど、そのお坊さんの話を聞いて、命の重さはもちろん、女性を見る目、接し方が変わった」・・・と。こんな、性教育もあるのだなーと感じました。

 コミュニケーションが希薄になってきた日本の社会の中では、どのような内容であっても(これは言いすぎ?)性についてまじめに伝えようとする方は貴重な存在です。しかし、一方で一生懸命正確なことを伝えようとしてもその伝え方の未熟さゆえに混乱が起こることもあります。包茎の問題でも相変わらずいろんな混乱が見受けられます。何を伝えるにしても相手を納得させること、インフォームドコンセントを心がける必要があります。
 そこで今回は包茎を題材に「包茎のインフォームドコンセント」と題して、混乱を起こさないような説明、インフォームドコンセントのとり方について考えてみたいと思います。

包茎のインフォームドコンセント

○『むいて訴えられた???』
 私は小児の包茎については手術をしなくても必ずむけるということをいい続けてきました。そしてそのことが少しずつ浸透してきているようにも思います。OCHINCHINがベストセラーになる一方で、非科学的であっても未だに「むくべからず」ということをかたくなに主張している医師もいます。そんな中で、むいてみせたものの理解が得られずトラブルになってしまうケースの相談をいくつか受けました。それらをまとめた仮想事例をもとに小児の包茎のインフォームドコンセントについて改めて考えてみたいと思います。

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 岩室先生。突然のメール申し訳ありません。先日相談を受けた生後3ヶ月の男の子のことです。母親が『包茎ですかね。上の子とおちんちんの形が違うから。』と言われたので包皮を1〜2mm下げてみました。亀頭は見えませんでした。その時に少し下げた部分が赤くなっていて恥垢が見えたので「赤ちゃんはほとんどが包茎なので心配ないと思いますが時々皮をむいてさきっぽの部分をきれいにしてあげて下さい。」と言って皮を戻しました。(この時恥垢も除去していません。)母親が『どの位下げたらいいですか?』と聞いたので同じように1〜2mm下げて戻しました。赤ちゃんはこの間泣いていません。それだけでした。
 この日の夕方5時に「保健師さんが赤ちゃんのおちんちんをむいてからおしっこがでない」と近所の内科を受診されています。その後、6時過ぎにおしっこがでています。その時に医師は「浮腫があり、赤くなって、出血しているので保健師さんがやり過ぎた」と言われ、翌日主治医の小児科でも同様のことを言われ「亀頭包皮炎症で加療通院1週間」の診断書をもらい、こちらに文句を言いに来られました。
 先輩保健師には「亀頭を診るのは診察、もしくは診断なのでそんな事はしてはいけない。」 その子の父親に「包皮を下げるのは医療行為だ。精神的、心理的、肉体的、経済的苦痛をどうしてくれるのか。」と言われましたがどう考えればいいのでしょうか。
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●『結果だけを見る過ち』
 みなさんはどう思われますか。これっておちんちんのむきむき体操だけではなく、あらゆる分野で起こり得ることです。特に対立する意見があるところでは相手が高圧的に、声を大きくして文句を言ってきたら得てしてこちらが劣勢に陥ります。
 ポイントは母親が「包茎」という質問をした時に、そこからいきなり「包茎なんてむければOK」という私の言葉を思い出していただいた点です(私の反省を込めて)。確かに私のケースでも既に4,000本を超える包皮翻転指導をし、指導を完了した75%のお子さんではきれいに、スムースにむけるようになっています。しかし、25%がむけていない、途中脱落という事実もまたあります。
 厚木病院で生まれた新生児の場合は(1)病棟での丁寧な初期指導(ビデオを含めて)、(2)泌尿器科医のフォロー、(3)1ヶ月検診でのチェック、という段階を通ることで親が意識付けられて行きます。それでもむけるまで継続できる親は75%です。プロセスを重視しても相手の理解が得られないことも少なくありません。では、亀頭包皮炎を起こした親なら全員その後の予防に積極的になるかといえば答えは「No」です。

○『痛い思いをするのは息子?』
 5歳の息子さんが亀頭包皮炎になって近くの小児科から紹介されてきました。おちんちんが真っ赤に腫れて化膿していたので無理やりむいて膿を出す痛い処置をするしかありませんでした。その次に私の外来に来た時のお母さんと私の会話です。
母:おちんちんをむくかむかないかについてはいろんな意見があるようですね。
岩:むかなくても命には影響しませんが息子さんのように痛い思いをするのはかわいそうですよね。
母:主治医の小児科の先生はむかなくてもいいといいました。
岩:どうして小児科の先生がむかないかをご存知ですか。(詳しくは下段の内容を説明)
母:確かにそうですが、やはりむかなくてもいいようにも思うのですが?
岩:息子さんがまた同じように亀頭包皮炎を起こして痛い思いをすることになってもそれくらいは我慢しなければと思いますか?
母:それくらいは・・・・・
岩:?????

●『小児科医がむかない訳?』
 小児科医でおちんちんをむくのが得意な先生がいます。その先生は以前は積極的におちんちんをむいていたのですが、開業してからは患者さんを私に紹介してくれるようになりました。患者さんのお母さんに「○○先生もお上手だからそちらでむいてもらえればいいのに」と言っても「そんなことあの先生ができるのですか」という反応でした。どうして昔のようにむかないのかを尋ねたら、こういうことでした。
 小児科医で開業すると、何より子どもたちに嫌われないようにすることが大事だそうです。もちろん母親にも。そのため子どもにいやな思いをさせる状況を最低限の場合に限らないと子どもが「あの先生のところには行きたくない」と言い、今の親は子どもがいやだというなら他へと簡単に主治医を変えてしまうので「触らぬ神にたたりなし」というのです。
 その先生が言うのも理解できますよね。むきむき体操の必要性を理解できない親に限って子どもが嫌がったら「あの先生はこっちが頼んでもいないのにむいて3日間もオシッコが出なかったのよ」とそれこそ風評被害で経営が行き詰まる可能性もあります。丁寧にしているつもりの私の外来でさえ脱落率が25%あるのに、小児科にせっかく風邪、予防接種、アトピー、育児不安、等々でかかってくれている患者さんが来なくなることを敢えてすることはないと思いませんか。小児科医にとって包茎は「触らぬ神にたたりなし」かもしれません。もちろんそうではない先生も大勢いらっしゃいますが。

○『インフォームドコンセントの難しさ』
 このように社会全体がおちんちんをむくという発想がない中でおちんちんをむくときには最新の注意をしつつ指導をしなければなりません。(これは性教育について無理解の社会の中で性教育を実施しようとする場合も同じでしょう。)むいて起こることとしては、出血と炎症が主で、その結果としてこどもが泣く、オシッコを我慢するということが起こりえます。もちろん無理をしなければ特に問題はないのですが、実は指導する側が無理をしなくても面白くなって親が無理をしてしまうことがあります。そして何かトラブルが起こると指導した側に責任を押し付けてくることも考えられます(勘ぐりすぎ?)。
 保健師さんや助産師さんが乳児指導で体の清潔を保つ一環としてむき方をさらっと教える場合本当に無理のない範囲でむけばいいと思います。親が、よくわかりました。もっと詳しくやってくださいと言ってきたらさらに積極的にやっても問題はないでしょう。ただ、その場合でも必ず「完全にむけるようになるまではむいてもむかなくても炎症を起こすことがあるんですよ。だから、炎症を起こしてもそれは「むいたからではなく、むけていなかったから」とインフォームドコンセントを確認する必要があります。

●『上手な包茎問答』
 では実際に包茎の相談を受けた時にどのようにすればいいでしょうか。
Q:包茎ですか?
A:あなたははどう思いますか?
Q:判らないから聞いているんです?
A:そもそも包茎ってどこでしりました?
Q:母親仲間からです。
A:その人はどう言っていました。
Q:よくわからないって。
(自分たちが混乱していることをきちんと認識させる)
A:おちんちんの皮がかぶっているのが包茎ですよ。赤ちゃんはみんな包茎です。
Q:包茎はよくないのですか?
A:いろんな考え方があるようですよ。
Q:むいた方がいいというお医者さんもいるし、放っとけという先生もいますよね。どっちが正しいのですか?
A:包茎はほとんどの場合、命に関わる問題ではないので、正解というのはないと思います。
Q:じゃ、どうしたらいいんですか?
(自己決定が重要だと認識させる)
A:紳也’s HPというのを見て参考にされるといいと思いますよ。
Q:見てみたのですがやっぱりむいた方がいいと思いましたがやり方を教えてください。
(これでインフォームドコンセントが成立)
A:ではでは・・・・・・

○『インフォームドコンセントの目標』
 インフォームドコンセントがきちんとされたかどうかは相手が納得し、意思表示をすることで確認してください。「包茎ですか」と聞かれたらいきなりむくのではなく、この質問を糸口に相手の自己決定を引き出していきましょう。
 それにしても、亀頭をみるのは「診察」、包皮を下げるのは「医療行為」というなら男はみんな医者ですね。だから小さい時にお医者さんごっこをするのか・・・・・。妙に納得?

◆CAIより今月のコラム

「最近の小学生」
今日のったバスで塾帰りの小学生らしき男子たちが、なにやらエロ話に夢中でした。

男子1:おまえ072っていってみー!
(オナニーと言わせたいらしい。)
男子2:なにそれ意味わかんねー。絵に描いて教えろよ。
男子3:ヤフーで調べれば分かるよ。
    ○○くんは小五で俺でも知らないこと一杯知ってるんだ。
男子2:わかんねえけど、なんかやばいことだろ。
    うちにはパソコンねえんだ。ワープロしかない。
男子3:学校で調べればいいじゃん。でもばれたらやだな。

そして一番いろいろ知っていると自慢げだった子は、バス停に母と妹が迎えにきていて帰っていきました。とてもほほえましい。

小学生がインターネットで性を知る時代です。
スカートめくりの時代は、はや昔。

                              O.N