紳也特急 76号

〜今月のテーマ『もったいない』〜

●『何が大事?』
○『一期一会』
●『本がつなぐ人と人』
○『もったいない』
●『あなたの周りの「もったいない」』
○『型にはめるなんて』

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●『何が大事?』
 先月は全国を飛び回り、岩手県北上市で講演した後東京に戻り、翌日は北海道名寄市。翌週は北海道釧路市、群馬県中之条市、山口県宇部市、防府市。その次の週は石川県金沢市のあとは宮城県登米市、名取市と続きました。長野県御代田町、佐久市の翌日は六本木ヒルズで世界エイズデー。最終週は秋田県大館市から東京に戻ろうとしたら霧で飛行機が飛ぶかどうか危ぶまれ、機長は「後10分で霧が晴れなければ離陸を断念します」と言う切羽詰った事態に。でも結局は飛んでくれてほっとしていました。そして熊本で日本エイズ学会。
 そんな中あわただしさの中で、自分の気持ちを理解してもらえる人に出会うと本当にうれしいものです。宮城県登米市(最寄り駅は東北新幹線のくりこま高原)に行った翌日が宮城県名取市(最寄り駅は仙台)でした。当然、誰もが仙台に泊まると思うでしょう。確かにそれが「普通」かもしれません。しかし、その合間の夜、私は横浜の自宅にいました。ある人が「もしかして、やっぱり岩室先生はラブ奥様のために昨日のように遠路遥々〜ご自宅まで戻っているのですかね?!さ、さすがです……講演会で公言されるほどの愛です。素直に、羨ましい。」とこんなメールをくれました。思わず「鋭いですね。あなたくらいですよ、見抜くのは(笑)。」と返信。もっとも家では夜遅くに帰ってまた朝には飛び出すのはいい迷惑と思われているかもしれませんが・・・・・。
 お金がもったいない、時間がもったいないという声も聞こえてくるような気
がしますが、大切なものって何でしょうね。このような理解者がいてくれるというのが私にとっての財産のように思います。たった数時間のコミュニケーションがどれだけ自分の生きる糧になるか。みなさん、どう思われますか。
 そんなことを考えていたときに、私が大好きなさだまさしさんの最新アルバム「とこしへ」の中の「MOTTAINAI」を聞き、衝撃を受けました。そこで、今月号のテーマを「もったいない」としました。

『もったいない』

○『一期一会』
 12月1日は世界エイズデー。今年の厚生労働省のイベントの一つが六本木ヒルズで開催され、佐藤江梨子さん、パンチ佐藤さんとご一緒させていただきました。サトエリさんと言われても「WHO?」と思っていた私ですが、彼女がCAIに託されたレッドリボンピアスをしてくれた時はうれしかったですね。また、「男は女を大事にして欲しい」とサトエリさんが言うというのは本当に強いメッセージとして伝わったのではないでしょうか。パンチさんにはコンドームの達人講座を盛り上げてもらいました。
 早稲田大学のqoonのメンバーが選んだYoshiさんとの企画では若者のみならず、いろんな社会現象を鋭い切り口で小説にしているその感性の鋭さを学び、みんなで語る中で「愛」を表現することの難しさを感じていました。上手に進行してくれたiaさん(あいあさんと呼ぶとはこれもまた知らず「男性ですか、女性ですか」と聞いていた自分がいました)には、帰国子女だという話をしたら「その方が今の日本ではいいかも」と言われ妙に納得したり。
 エイズデーイベントの最後は六本木ヒルズのYahoo!からのライブトーク。サトエリさんを上手にリードする荘口さんとの「本音トーク」は10000人のネットリスナーからの質問を受けながらのやりとりで臨場感がありました。テレビやラジオと違い、すぐ向こうにいる人を生で感じたのは「サトエリをもっとアップに」という書き込みでした。そして何よりびっくりしたのが六本木ヒルズの警備体制の厳しさでした。このように忙しいながらも、一瞬一瞬を楽しませていただいている私がいました。いろんな人にいろんな機会を与えていただいていることに感謝です。

●『本がつなぐ人と人』
 「いいじゃない いいんだよ」はお蔭様でいろんな方に読んでいただいています。そして何よりうれしいのはいただく感想の数々です。
 娘さんとの会話が増えた。
 いろいろと難しい問題を取り上げているのに、「何も難しいことなんてない」と思わせてくれる、心の安定剤のような1冊だと感じました。
 良い本ですね。しかし、思わず涙がこぼれてしまうので、電車の中で読めないのが難点です。「若者に送る大人たちの本音のメッセージのつもりです。」に対して「若者ではなくて、自分が癒されるようです。」
 中学生の間で「理不尽」ということばが流行るようになったようです。
 どの言葉も私にとっては生きる力になっています。いろんな人とつながっているおかげで、時間がない中で充実した人生を送れていると思います。

○『もったいない』
 さだまさしの最新アルバム「とこしへ」に「MOTTAINAI」という歌があります。ぜひ一度聞いてみてください。でも、どうして「もったいない」ではなく「MOTTAINAI」なのかを知らなかった私はネットで検索していました。
 私が小学生時代に住んでいたケニアの環境副大臣だったワンガリ・マータイさんはグリーンベルト運動と呼ばれる植林事業で2004年にノーベル平和賞を受賞しています。その彼女が、日本で「もったいない」という言葉に接し、エコロジー、3R活動=消費削減(Reduce)、再使用(Reuse)、資源再利用(Recycle)に取り組む立場から「もったいない」という言葉に深い感銘を受け、世界に「MOTTAINAI」という言葉と、そこに込められたこころを広げたいと考えておられるようです。その気持ちを受け、さだまさしさんが歌を作っています。

●『あなたの周りの「もったいない」』
 移動中にこの曲を聴きながら、今の日本で「何がもったいない」のかと思っていたら次々ともったいないことがあることに気付かされました。

 ありがとうと言えないなんて もったいない
 大人が自分の背中を見せないなんて もったいない
 生きている楽しさを知らないなんて もったいない
 つながっていることに気づかないなんて もったいない
 友達をつくらないなんて もったいない
 人のやさしさに気がつかないなんて もったいない
 君を愛している人を知らないなんて もったいない
 「セックスをするのは勝手でしょ」なんて もったいない
 情報も薬もある日本でエイズで死ぬのは もったいない
 「愛の反対は無関心」を知らないなんて もったいない
 わかっていることを教えないなんて もったいない
 命を守るコンドームを教えないなんて もったいない

 皆さんの周りには「もったいない」があふれていませんか。

○『型にはめるなんて』
 先日、「以前、岩室先生のお話はうかがったことがあるのですが、何か別の方のお話を聴くような気がしました。」という感想をいただきました。確かに以前の私は性についても直球勝負で、コンドームを一生懸命強調していました。しかし、それはほとんどの人がコンドームということを敬遠し、若者たちにとってコンドームが遠い世界のものだった時代ではないでしょうか。今ではコンドームが教科書にも載り、コンビニで気軽に買える状況になりました。その一方で、無責任、無関心が広がっている社会になりました。そんな社会の病理が見えてくる今、時代の現状とニーズに合致する方向で話をするのが当然ですよね。しかし、岩室紳也=コンドームと思い込んでいる方は、私のみならず、その方の周りにあるいろんな出会いのチャンスを逃していませんか。
 それこそ「もったいない」。