紳也特急 86号

〜今月のテーマ『性教育は真剣勝負』〜

●『安倍総理のお膝元』
○『評判が悪い外部講師?』
●『自分の講演を聞いたことは』
○『スローガンはやめよう』
●『性教育は真剣勝負』
○『今一度、自分の性教育再点検を』

…………………………………………………………………………………………
●『安倍総理のお膝元』
 最近、なぜか山口県に呼ばれることが多く、先日もお邪魔してきました。山口県出身の首相は何と8人。東京都と並ぶ日本トップの数です。伊藤博文、山県有朋、桂太郎、寺内正毅、田中義一、岸信介、佐藤栄作、安倍晋三。少なくとも岸さんまでは日本史の中で勉強した記憶があります。このように常に国をリードする心意気をもった人を輩出する地域でいつも気になるのが黄色いガードレール。ガードレールと言えば全国各地のものは「白」と決まっています。というか、そんなことも考えたことはないと思います。しかし、なぜか山口県で目に飛び込んでくるのは黄色いガードレール。地域特性を出そうと、ガードレールも特徴あるものにしたのでしょうか。
 その山口県出身で美しい国を作りたいと考えている安倍首相も地元で起こった同級生殺人事件をぜひとも教訓にしてもらいたいものです。どのような教育をすれば彼を凶行に走らせなくすることができたのか。そもそも、なぜ事件を起こさない人と、起こす人がいるのか。再チャレンジもいいのですが、本当に再チャレンジというのであれば、少年院から出てきたのに、親も、誰も引き取らないこの社会は「再チャレンジ」の世の中とは言えません。「教育の再生」がスローガンで終わらないことを期待しています。
 ちょうど安倍首相が誕生した時に「思春期保健指導者養成講座」なるものを開催し、あらためて「性教育は話し手と聞き手の真剣勝負」と感じました。そこで今月のテーマを「性教育は真剣勝負」としました。

『性教育は真剣勝負』

○『評判が悪い外部講師?』
 私が「思春期保健指導者養成講座」なるものを始めたのは、性教育バッシングを通して、「何かへん」、「子ども不在」と感じたからです。学校で行なわれているいわゆる「性教育」は学習指導要領に沿った内容であることが求められたり、その内容に制限があったりすることも、時代と共に見直されていくべきものであることも当然だと思います。それを補完する必要が生じた時に、学校側が外部講師に学習指導要領という枠組みにくくられない内容を、生徒さんたちの実情に合わせて学校長が判断し取り入れることもまた文部科学省は否定していません。ただ、そのようなことを期待されて学校が呼んだ講師の評判を聞くと「スローガンやきれいごとを言ってぜんぜん子どもたちの心に響かない」というクレームも少なくありません。何故なのでしょうか。

●『自分の講演を聞いたことは』
 そもそも健康教育や講演等の仕事をしている人は、その内容をビデオやテープにとって自分で聞きなおしたことはありますか。「そんなの恥ずかしいから」と見たことがない人は即刻性教育をやめてください(笑)。恥ずかしいのは良くわかるのですが、客観的に自分の話を聞き、きちんと評価しなければいい内容かどうかわからないと思います。自分の仕事をきちんと評価してレベルアップするのがプロじゃないでしょうか。
 私が性教育を始めた時に幸いしたのが、あまり性教育をしている人がいなく、自分の話の内容に自信がなかったので、話す内容を一字一句書き留めて話した上に、講演をテープにとって車の中で聞きなおしたのを記憶しています。スピーカーから聞こえてくる自分の声はいつも聞きなれている声とは違い、トーンが高く、恥ずかしかったのを覚えています。しかし、聞きなおしてみると、無駄な言葉が多く、もっとスリム化した内容にしなければと思ったのを覚えています。

○『スローガンはやめよう』
 今年の「思春期保健指導者養成講座」では、3分間スピーチを一つマスターしましょうということを目指しました。「聴かせる3分スピーチ」とは何かを体得できれば、それを20個持っていれば60分の講演は成立します。40個あれば2時間の講演が出来ます。このような狙いでまずは初日に受講者に3分間スピーチをやってもらいました。テーマは何でもOKです。
 お互いをよく知らない中で最初は「堅苦しい」、「きれいごと」、「スローガン」、「押し付け」といったキーワードが当てはまる内容を話す人がほとんどでした。一人ひとりに「そんなスローガンじゃ子供たちは聞きたくないよね」と言わなくても、他の受講生は「伝わらない、心に響かない」ということを感じ取ります。

●『性教育は真剣勝負』
 このように書くと、皆さんがまったく心に響かない話ばかりをしているかというと実はそうではありません。むしろ、「前半がすごく良かったのに、最後にスローガンが入ったためにせっかくの内容がぼけてしまいましたよね」ということがほとんどです。それを一つ一つ丁寧に指摘し、修正した3回目の受講生の3分間スピーチは、間で何の指摘も入れることなく続けてもらうと、それだけで性教育の講演会として喝采を浴びる内容になっていました(涙)。
 この研修会の一番のポイントは「自分の弱いところを指摘される」ことを乗り越えられるか否か、そもそも「自分の性と向き合えるか」が問われます。指摘する側も真剣です。そして、自分を語るモデルとして私がお願いしているのが北山翔子さん。彼女は自分自身に起こった事実を淡々と、無駄なく語る中で、何かを押し付けるのではなく、聞き手が何かを感じてくれる話をしてくれます。

○『今一度、自分の性教育再点検を』
 安倍首相が掲げる「教育の再生」は本当に大切なことです。それを成功させるためにも、多くの人が一生懸命取り組んできた性教育での失敗経験をぜひとも活かしてもらいませんか。スローガンを掲げ、大人の価値観を押し付けてきた性教育では若者たちは耳を塞ぐだけではなく、大人たちへの反発を強めるだけです。何も伝わらない「再生された教育」ではますます美しくない日本になるばかりです。そのためにも、まずは性教育に取り組んでいる一人一人が自分自身の性教育を再点検しませんか。そして自分たちの反省を「教育の再生」に活かしてもらえるような提言をしたいですね。

お礼
 このメルマガを発行しているCAIの設立当初からのメンバーだった目黒道人さんが、故郷の福島に帰られることになりました。寂しい思いと、福島に新たな芽が誕生することへの期待と複雑な心境ですね。本当にお世話になりました。そして、これからもよろしく。